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ちりちりと疼く右手に、露草は微かに目を細めた。
何か気になる。
こんな風に片手が騒ぐことは今までなかったように思う。
其れが、妙な視線のような気がして、露草は視線の先を探しそうになる意識を押し込んだ。
知っているような、知らないような、微妙な感覚だった。
少なくとも、蘇芳でもなければ木路蝋でもない。
『相手の立場も解らないのに、先に気づいたことを悟られてはいけないんですよ』
ある時、蘇芳が言っていた。
それこそ、兎を喰ったすぐあとに、木路蝋は蘇芳を役に立つように仕込んだらしい。
らしいというのは、露草にはとてもそんな話は届かなかったからだ。
だから、蘇芳の口からそんな言葉が出たこと、それから蘇芳がすっかり護衛の役に定着してしまったことから、その記憶は、露草にとって酷く悔しい想い出に繋がっていた。
「誰、だよ」
ぽつりと零して、露草は小さく舌打ちする。
此処には蘇芳も、木路蝋もいない。
無力というのは歯がゆく、苛立たしいことだ。
こっそりと入り込んでくる冷ややかな何かから無理やりにも意識を剥がして、露草は机の下で睨むように両手を握りしめた。




