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蘇芳が、最初にそれに気づいたのは、特別な力が働いたからではなかった。
ただ、ほんの少し、太陽が眩しかった。
それだけの事だった。
無事に授業の登録の話も終わって、職員室を出た蘇芳は、長い廊下を歩きながら、窓から入ってくる陽射しに手庇を作って眉を顰めた。
そうして、ふと廊下の向こうから歩いてくる一人の少女に気が付く。
別段覚えのある顔でもない筈なのに、どうしてか蘇芳は目を離せなかった。
不意に、踊り場から姿を見せたのは一人の男子生徒。
ぞくりと。
本当に唐突に、蘇芳の背中を薄氷が滑り落ちた。
「っ」
接点もない二人の生徒。
顔かたちも、纏う雰囲気も違うのに、二人は瓜二つだった。
「後手後手ですか。本当に嫌になりますね」
行儀悪く小さく舌打ちして、蘇芳はぱっと踵を返すと西側の階段を駆け上がる。
もう一階分あがれば、其処には広い渡り廊下があったはずだ。
振り返らなくても、二人が追いかけてきていることくらい解る。
あの目。
夢見るようなあの目は、夢獣に憑かれているのだ。
とうとう、相手が本格的に動き出したらしい。




