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あいろこいろ  作者: カラクリカラクリ
本編
53/104

052

呆気にとられた蘇芳が、はっとして頭に手をやると、生えているはずの耳がなかった。


「どういう、」

「説明してやるから、さっさと露草を起せ」

「まさか、」


半信半疑のまま額の符に、口づけると、やはりこちらもぶるぶると身を震わせる。


「つゆ、くさ?」


ぽっかりと開いた瞳の色が、見慣れたものとそっくりな気がして、蘇芳の口から思わず言葉が零れ落ちた。


『ちょっと、これどういうことだよ?』


不機嫌な声が耳に届く。

独りでに立ち上がったその人形は、仁王立ちで木路蝋を睨んだ。。


『未完の小説並みに迷惑なことしてくれるよね』

「妙な例えだな」

『うるさいな。頭がまわんないんだよ』

「この方が、説明がしやすいと思ったまでだ」


素っ気なく呟いて、木路蝋が露草の身体に入った何かを振り返る。


「これでいいだろ」

「そうだね」


木賊がその瞳を覆っていた手を外したが、その視線に捉えられても、蘇芳はもう妙な悪寒は感じなかった。


「なんだ、外してしまったのか。つまらぬの」


兎耳の生えた日本人形を抱き上げて、露草もどきは慣れた手つきでそれを撫でる。


「ほれ、いつまで寝ておるつもりか。はよ、起きれ」

『起してほしいなんて、誰が頼んだよ』


唐突に響いたのは、聞き覚えのない、けれど何処かで確かに聞いたことのある声だった。

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