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あいろこいろ  作者: カラクリカラクリ
本編
52/104

051

露草の額から移された符が、木路蝋の手の中の、平安貴族のような格好の人形の額にぺたりと張られる。


「おい」

「え?」


それが自分を呼んでいるのだと気付いて顔をあげた、蘇芳に、木路蝋が無造作にそれを放った。


「!?」


危うくキャッチして、蘇芳は胸を撫で下ろす。

精巧な造りのそれは、多分目玉の飛び出るような値段のはずだ。


「どうして投げ」

「妙な起こし方をしてくれるものよの」


蘇芳の言葉を遮ってふあと欠伸を零して起き上がった露草は、露草ではなかった。

片方の目が、燃えるように朱い。

息を呑んだ蘇芳に気づいて、その露草の身体をした何かは驚いたようにその目を瞬かせた。


「ほう。これもまた、妙だ」

「っ」


ざわりと身体の中で何かがざわめいてうごめいて、蘇芳は危うく取り落としそうになった二対の人形ごと、自分の身体を抱きしめる。

そうでもなければ、その視線に耐えられそうもなかった。

不意に、伸びてきた手が、その朱い瞳を覆い隠す。


「む?」

「織様。貴方の視線は、今のこの娘には強すぎる」


それは抑揚のない木賊の声で、露草の姿をした何かは不満げに口を尖らせた。


「だが、これでは話し難いぞ」

「そうですね。木路蝋、」

「たく、回りくどいんだよ、木賊。おい、蘇芳」


がりがりと髪をかいた木路蝋の言葉は、一瞬の後に蘇芳の頭に染み込む。


「今、」


名前で呼ばれたことなどなかったのだ。

木路蝋は多分今まで、意図的にそうしてきた。

だから、今の此れにも何らかの意味があるのだろう。


「露草を返して欲しいなら、その人形に口付けろ」

「人形に、ですか」

「あぁ。二体ともだ」

「少女は頬、少年は符の上から額に、ね」


そっと手を添えた尾花に従って、口付けを落とせば少女の人形は不意にふるふると震えて、唐突にぽんと頭から兎耳を生やした。


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