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閃光が収まると同時にふっと意識を失った露草を手を伸ばして支えた木路蝋に、蘇芳が驚いたような視線を向けた。
「狼狽えるな、寝てるだけだ」
「何を考えて」
「引っ張り出すには、これが手っ取り早くてね」
苦笑した十文の言葉の裏で、木賊が手にした札を露草の額に張り付ける。
僅かに歪んだ露草の表情をちらと見て、木路蝋はため息をついた。
「引っ張り出す? どういう意味ですか」
堅い声をあげて今にも立ち上がろうとした蘇芳の肩を、尾花がそっと叩く。
「大丈夫。蘇芳ちゃんの兎とは違うから。血筋よ、血筋」
「血筋?」
「残念だけど、一番濃い血を継いでるのはこの子ってこと」
「血の濃薄が、一体何に関係してるっていうんですか」
「招魂」
「え?」
「生憎とだけど、自分や十文、尾花には実行不可能ってこと。木路蝋、形代は?」
「こっちだ」
木賊の言葉に木路蝋が背後の床の間から取り上げたのは、精巧につくられた一対の日本人形。
「こっちは、蘇芳ちゃんね」
唐突に黒髪の少女の人形の方を渡されて、蘇芳は小さく瞬いた。




