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あいろこいろ  作者: カラクリカラクリ
本編
5/104

004


午後の三コマの授業を終えると、もう外は薄暗い。

少し前までは、帰りに寄り道しようか、と考えてしまうほど長かった陽が今は少し憎らしくなるほどには、短い。

揃って校門を出た蘇芳と露草は、特に歩調を早めるでもなく家路を辿る。

涼しさを増した風が、蘇芳の帽子から出た髪を揺らした。


「あんた、こっちじゃないだろ」

「美味しいお弁当も食べましたし、挨拶に行こうかな、と思いまして」


途端に露草が弾かれたように顔をあげる。


「なに、まさか居るの?」

「え? はい。来いって言われましたよ」


あっさりと蘇芳が頷くと、往来にも関わらず、露草が頭を抱えて小さく呻いた。


「あぁもう。あんたが来た時点で、予測できたはずなのに!」

「あの、」

「僕は帰らないからね!」

「帰らなくて、どうします?」

「そんなの」

「良く考えてください。これから、夜です」


うっと言葉につまった露草に、畳み掛けるように蘇芳はぴたりと指を指す。


「ということで、露草が帰らないのに挨拶に行ったら、叩き出されます」

「そうかもね」

「かといって露草についていっても、挨拶に来なかったと怒られます」


ぴんと立った人差し指と中指を、露草は親の敵のように睨みつけていたが、蘇芳がそれをゆらゆら揺らすと、諦めたようにため息をついた。


「あぁもう。解ったよ」

「助かります」

「別にあんたのためじゃないんだからな。木路蝋(きじろ)がその気なら、逃げたって無駄だって気付いただけで、」


従兄弟に当たる人物の名を吐き出すように告げて、露草は少しだけ歩を早める。


「露草は、そんなに木路蝋さんが苦手ですか?」

「苦手? 冗談じゃないよ。でも、あいつに会わなくて済むなら、生徒会長に握手でも求めた方がマシだね」


人混み嫌いな露草にしてみれば、随分大袈裟な言いようだ。

昼に食堂であれだけ近づきたがらなかった人間よりも、従兄弟が鬼門という訳である。


「あんたも、つくづく災難だよね」


露草がしみじみと呟いた言葉は、夕暮れの空気に融けて消えた。



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