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「ちょっと、十文、火に油を注がないで」
「自信ありげだけど、それ用法違うし」
あっさりした木賊の言葉に、尾花が目を吊り上げた。
「なに? さっきからやけに突っかかってくるね、木賊」
「普通だけど? 自意識過剰じゃない?」
「これが普通? 馬鹿にしてるわ」
「あのさ、内輪もめならよそでやってよ」
不意にうんざりしたように冷ややかな言葉が空間をまっぷたつに切り裂く。
少なくとも、蘇芳はそう思った。
それが露草の言葉だとは一瞬気づかないくらいに。
「やっぱり、お前は此処に馴染むんだな。露草」
嘆息と共に落ちた言葉にはっと顔を向けると、姿勢を正す様に座り直した木路蝋が、ひたと露草を見つめていた。
「はぁ? 何言ってるわけ?」
「本来なら、お前は当主の器だってことだ」
「馬鹿なこと言わないでよ。こんな紙切れに書いてある戯言信じるわけ? この和綴じが本物だって確固たる証拠もないだろ。さっきからあんたが言ってるのは、全部僕には何も響かないんだけど」
「だろうな」
あっさりと頷いた木路蝋に疑問を口にしようとして、蘇芳はいつの間にか静かになっていた木賊と尾花、そして十文が低く呪を唱えているのに気づく。
「な、にを」
独り言のように零れ落ちた言葉が床につくより前に、眩しいほどの光が目の前で弾けた。




