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あいろこいろ  作者: カラクリカラクリ
本編
45/104

044

時は遥か彼方まで遡る。

西の帝の寵愛を受けていたのは、呪術士と呼ばれる人々だった。

東の帝の寵愛を受けていたのは、祈祷師と呼ばれる人々だった。

どちらからも省みられなかったのが、道法使であった。

歴史の闇を紡ぐ道法使が生み出したもの。

それが夢獣だ。

夢獣は、不四象の骨と貘の血。それから、僵尸の髪と爪で造られる。

夢獣は人間の夢を喰らい、運やツキというエネルギーを得ては、囁くように人間を不幸にする。

道法使は、彼等を世界に解き放った。

夢獣を祓う術を持つのは、彼等を造り出した道法使だけ。

跪くなら、助けよう。

拒絶するなら、滅ぼそう。



「ちょっと、これ」


呆然と顔を上げた露草に、けれど木路蝋は揺らがなかった。


「ま、当然の反応だよな」

「そうだろうけど、こっちは普通」


木賊に顎で示されて、蘇芳が反論する前に、後ろから伸びてきた手が、がつんと木賊の頭を殴る。


「さっきから聞いてれば、木賊。あんたの相手初心者の子たちなんだから、意識的に言葉補いな」

「解ってるけど、仕方ないだろ」


にらみ合う尾花と木賊を放って、十文が肩を竦めた。


「禁書の由縁が解ったかい? 二人とも」

「これが、事実なんですか? 木路蝋さんは、いつ知ったんですか? これは、誰が知ってることなんですか? そもそも、」

「口を閉じろ」


矢継ぎ早に口から零れた疑問に、木路蝋がうんざりしたように待ったをかける。


「先に言っておくが、俺たちの家系は途中で道法使と呪術師が混ざって今に繋がる。道法使は取り立てられるようになると、俄か仙術も行使するようになるんだが」

「仙術?」

「霞喰って生きてる、不老不死を求める奴等の技だな」


物凄くざっくりした十文の説明に、木路蝋は微かに目を細めたが、そのまま言葉をつづけた。


「その仙術の原理が、表向きの夢獣の説明に近い」

「え?」

「夢獣は人の夢を司り、悪夢を喰らい、悪夢を植え付け、吉夢を見せ、吉夢を奪う。一匹の夢獣を喰らい使役できるようになれば、悪夢は失せる。また、周囲の人々から夢のエネルギーを得て、老いることもなくなる」


淀みなく紡がれた言葉に、蘇芳は帽子に手を伸ばす。

帽子の下で、兎耳が存在を主張するようにぴこぴこと揺れた。

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