043
「木路蝋!」
勢いよく尾花が襖を引き開けた。
襖の向こうで、三人が振り返る。
「なんでいる訳?」
呆然としたように呟いた露草が見つめているのは、木路蝋の左隣に座る、派手な髪色の青年だった。
「お知り合いですか?」
「姉さんの旦那」
不可解だというように紡がれた言葉に、蘇芳は驚いてまじまじと露草の義兄を眺める。
「やあ、我が義弟。久しぶりの邂逅だな。そっちは、今様がライバル視している義妹候補さんか? 始めまして」
「無駄口はいらないけど、自己紹介くらいしたら?」
彼の横で、酷く呆れたように色素の薄い髪の青年が肩を竦めた。
「あぁ、そうか。オレは十文」
「どうでもいいけど、自分は木賊」
「蘇芳です」
蘇芳がぺこんと頭をさげると、唐突に伸びてきた木賊の手が帽子を奪う。
はっとして耳を隠す前に、木賊が目を瞬いた。
「話は聞いてたけど、こうなってるんだ」
「木賊」
不機嫌な木路蝋の言葉に、木賊が目を細めて帽子を放った。
慌ててそれを掴んで、蘇芳はそれを被り直す。
「ちょっと、いい加減説明してよね」
「露草君の言うとおりだってば。連れてきたんだから、説明しなさいよね」
痺れを切らした露草に加勢した尾花を微かに睨んで、木路蝋は十文と木賊に視線を投げた。
唐突に立ち上がった二人は、部屋の隅からそれぞれ二つの箱を持ってくる。
十文の持つ箱は桐箱で、木賊が手にしているのは行李のようだった。
躊躇いもせず行李の蓋を取って、木路蝋は中から取り出した古い和綴じ本を無造作に蘇芳と露草の前に放る。
「これは?」
「禁書だ」
「はぁ?」
「夢獣の本当の生態と、過去には成功の可能性のなかったある術についての詳細が記されている」
本当の生態、という木路蝋の言葉に、蘇芳は露草と顔を見合わせて、和綴じ本に手を伸ばした。




