003
大学のような教育システムのせいか、学校内には様々な施設がある。
公立にはない、食堂やレストラン、カフェテリアもそのひとつだ。
値段は生徒向けに外に比べてかなり安く設定されているが、特に食堂は生徒手帳を提示することで更に安くなることもあって、大半の生徒がそこを利用している。
昼前の授業を終えて、蘇芳が食堂を覗くと、席は殆どが埋まっていた。
「混んでますね」
「だから、言っただろ」
不機嫌さを隠そうともしないで、露草は腕を組んだまま鼻を鳴らす。
「はぁ? 食堂?」
「うん。給食はないですよね?」
「馬鹿じゃないの? あんな人のごった返してる所で食べるなんて、御免だから」
教室を出ようとした所で、露草に引き止められて、蘇芳はきょとんと首を傾げた。
「何処で食べるんですか?」
「面倒だから、此処で良いだろ」
「此処、ですか?」
授業が終わって、人の疎らになった教室はひんやりと涼しい。
「お弁当持ってます?」
「当たり前だろ。初日に見て、うんざりしたんだ」
人の多い所を好まない露草は、至極当然と頷いて蘇芳を睨んだ。
「弁当。あんたの事話したら、今日は大量に持たされたんだ。わざわざ僕が重い思いして持ってきたんだから、食べないとは言わないよね」
「食べます」
「それなら」
「でも、折角なので、先に食堂の人混みを見学してきて良いですか?」
「あんたも物好きだよね」
呆れたようにため息をついて、それでも露草は蘇芳を案内するように歩きだした。
「ちょっと、もう良いよね。早く行くよ」
踵を返そうとした露草の服の裾を、蘇芳が素早く掴む。
「露草、質問です」
「今度は、何だよ!?」
「あそこは、食券の列ですよね?」
「そうだけど」
「では、あちらは?」
蘇芳の示した女子生徒ばかりの人混みの一角に視線を投げて、露草は途端に肩を竦めた。
「生徒会長」
「人気があるんですね」
「まあね」
「では、あそこの人は?」
食堂の反対側の一角。
たった一人で六人掛けの席に陣取っているあまりガラの宜しくない男子生徒をちらりと見て、露草はため息をついて蘇芳の腕を掴む。
「ちょ、露草」
「あれは番長に群がってる、下っ端の一人だよ。言っとくけど、生徒会長にも番長にも、下手に関わらないでよ。言ったよね、目立つなって。さっさと戻って昼ご飯にするよ」
「はあい」
ずるずると露草に引きずられるままに其処を後にして、蘇芳は一瞬だけ食堂に目をやると、すぐににっこり笑って露草の横を歩き出した。




