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「どうして、知ってるんですか」
衝撃から立ち直って漸く紡いだ言葉に、ふんと鼻を鳴らして、木路蝋は目を細めた。
「先手を打ってきたからだ」
「え?」
弾く様に飛ばされたカードのようなものが、蘇芳のすぐ前に滑ってくる。
其れに手を伸ばして、蘇芳は今度こそ言葉を失った。
「覚えがあるようだな」
「これは、いつ」
「今日の昼すぎだ」
撮られた覚えのない写真には、確かに蘇芳が写っていて、それは間違いなく、今日のあの場の写真だった。
「早すぎます」
「あ?」
「撮られたのは、今日の昼前です」
僅かに顔を顰めた木路蝋に、蘇芳は必死で頭を回転させる。
帽子が取れた一瞬。
右の横顔。
望遠のようなアングル。
どの位置からならば、この写真は撮れるのだろう。
「木路蝋さん、これは普通の写真ですか?」
「いや。念写の一種だろうな」
「そうですか」
通常の方法でないならば、まだ候補は減らせない。
「おい」
「はい」
「心当たりがあるのか?」
忌々しげな口調に、蘇芳は一瞬ためらってからため息をついた。
今日は不運にばかり鉢合わせている気がする。
「この写真を撮られた時に、心当たりに当たっているところだったんです」
「なるほどな」
苦虫を噛み潰したように、木路蝋は写真を睨んで舌打ちした。




