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「あの、山吹さん」
「山吹でいーよ?」
「山吹は、木路蝋さんの知り合いですか」
一瞬目を丸くしてから、山吹はへにゃへにゃと笑う。
「聡いなぁ。うん。そーだよ」
「露草の、護衛ですか」
「蘇芳さんが来るまでの、ね。ごえーというより、監視役かなぁー?」
「眠たがりなのは、ブラフですか」
知らず零れた固い声に、山吹はきょとんとして首を振った。
「違うよー。それは体質。あたし、実験体なのー」
「!?」
突拍子もない台詞に蘇芳が驚いて顔を上げるが、山吹は相変わらずの様子でへにょへにょと肩を竦める。
「あたし、呼ぶほーじゃないから。被害のちーさいもので実験しよーってことで、上手くいったら、露草君にも適応したかったみたいだよ? でも、生憎こんな感じで、いまいちいい結果じゃないの」
全く気にした様子もなくあっけらかんと告げて、欠伸を零した山吹は目を擦った。
「何処でも寝ちゃうしねー」
「どうして、怒らないんですか」
「んー?」
「実験台なんかにされて、どうして」
「自分で申し出たんだよ? あの人に認められたら、嬉しーし、あの人の考えにさんせーしてるの」
「考え?」
「それはあたしの口からは言えなーいや。あの人にきーてね」
山吹は教室を出る前に一度だけ振り返ってへにょんと笑う。
「あたしね、あたしの為に実験受けたんだよー。だから、そんなえらそーなものじゃないからね」




