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あいろこいろ  作者: カラクリカラクリ
本編
30/104

029*


不意に流れてきた風に、木路蝋はふと庭へと視線を投げる。

縁側に続く襖はすっかり開け放たれているが、まだ寒いと身を震わせるほどではない。

空は良く晴れていて、流れる雲も穏やかだ。

庭木はほんのりと紅葉して、秋桜や薄がふわふわと揺れている。

どこからどうみても、秋というのにふさわしい過ごしやすい午後の陽気である。

けれど、


「嵐の前の、なんとやらか?」


背筋をひと撫でするような嫌な気配に、木路蝋は珍しく一人ごちた。


「入るけど、良い?」

「あぁ」


廊下側の襖越しにかけられた声に、木路蝋は庭から意識を移す。


「用件あるけど、先に郵便」


差し出された封書に視線を落として、木路蝋は知らず眉を顰めた。


「これ、か?」

「うん?」

「いや。全く正しい。第六感も馬鹿にできないな」

「どうでもいいけど、何の話?」


それに答えず封を開くと、落ちたのは一枚の便箋と写真。


「良く解らないけど、後手に回った?」

「らしいな」


忌々しげに舌打ちを零して、木路蝋は手にした封筒をひっくり返した。

宛先も差出人もない。

ただほんの微かに、夢獣の気配がする。


「因みに聞くけど、怒ってる?」

「いや」

「其れならいいけど、まだかかるよ」

「だろうな」


溜息をついてがりがりと髪をかくと、木路蝋はその封筒を押しつける。


「あいつに、調べさせとけ」

「やっても良いけど、直ぐは無理だね」

「解ってる」


廊下側の襖が閉まるのを耳だけで聞きながら、木路蝋は便箋と写真を見下ろした。

便箋に並ぶ文字は、滑るように達筆だ。

見覚えもなければ、身に覚えもない。

けれど相手は、こちらを正確に把握しているという事だろう。


『目を離すな』

「望みはなんだ?」


帽子を被っていない蘇芳を映した写真を取り上げて、木路蝋は目を細めた。


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