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あいろこいろ  作者: カラクリカラクリ
本編
27/104

026


「番長を名乗りたいなら、熨斗つけてくれてやる」

「いりません」


きっぱりあっさり切り捨てると、鈍は僅かに片目を眇めた。


「それ以外に買ってやる理由がない」

「恨みを買った覚えはないんですか」

「ない」


躊躇う様子もない答えに蘇芳は呆気にとられてまたたく。


「ないんですか?」

「当たり前だ。戦争してるわけでもない」

「はい?」


言葉の意味が解らずに眉を顰めると、鈍は面倒くさそうにふぁと欠伸を零した。


「正当防衛だ」

「それには賛同しかねますが」


にっこりと笑って、蘇芳は構えもなく鈍との距離を詰める。

けれど意外に俊敏な動きで距離を取られてしまった。


「どうして逃げるんですか」

「正当防衛の理由、作らせるのは面倒だ」

「だったら、買ってください。喧嘩」


ふっと身を沈めて、蘇芳が繰り出した蹴りを軽くいなして、鈍は嫌そうにため息をつく。


「めんどくせぇ」

「ちょ、てめぇ鈍さんに何を!」


不意に割り込んだ彼に、蘇芳はげんなりしてけれどそのまま飛んできた拳を避けた。

僅かに驚いたような顔をした元番長が、表情を引き締めて構えを取る。


「てめぇ、出来るな」

「邪魔しないでくださいよ」


むぅと膨れてみせた蘇芳の拳をいなしつつ、元番長は不機嫌に応戦してきた。


「はぁ!? 俺を差し置いて鈍さんに喧嘩売ろうなんていい度胸段だよ!」

「知りませんよ、そんなの。部下じゃないって言ったじゃないですか」

「こら! 女の子相手に何やってるんだい!」

「おい、風紀を乱してんなよ」


不意に降って湧いた声に、蘇芳は頭を抱えたくなる。

これは明らかに厄介だ。

それぞれの間で微妙に冷えた空気を悟って、蘇芳は引き際を悟った。

仕方ないが、これでは無理だろう。

ちらりと、近寄ってくる会長と風紀委員長に一瞥をくれた蘇芳は、だからその一瞬に気を抜いたのだ。


「っ」


頭の上すれすれを通り抜けた拳とそれが起こした風が、蘇芳の帽子を引っさらった。


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