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自分の欠点を上げて数え続けてもきりがない。
少なくとも露草は、自分の中に誇れるものがあるとは思っていなかった。
かといって、悲観的だったわけではない。
ただ自分が出来ることの幅を、本当より少なく見積もっていただけだった。
実際のところ、自分の幅を見極めることが何よりも難しいことのように思う。
「露草君はいくつに?」
「高校一年だけど」
「そうかそうか。確か霧ヶ峰だったね?」
世間話の要領で尽きない会話の向こうに座る蘇芳が見える。
けれど此処でこの場を離れれば、また要らぬ注目を集めることは必須で、結局露草も話を切り上げられずにいた。
それは一途に、同じ輪の中に木路蝋がいたせいでもあるだろう。
「そうだけど」
「いや、あそこは良い空間だよね」
「うちの娘も来年受験なんですよね」
酒を浴びるように飲み続けている木路蝋は積極的にこの話題に連なる予定はないらしい。
木路蝋が酒を飲むのはこういった宴の時だけだ。
普段は一滴も飲まずに、当主としての義務を熟していることを考えると、若輩の身の上にして、結構な重圧を背負っているのだろうことが思い浮かぶ。
「来いよ」
視線に気づいたのか、木路蝋が僅かに招く。
露草は、一瞬だけ蘇芳とその頭から伸びている兎耳に一瞥をくれると、立ち上がると木路蝋のすぐそばまで歩いて行って腰を下ろした。
酒のにおいが鼻をつかないのは、上質な清酒であるせいだろうか。
この家の宴には、ビールもカクテルも出ることはない。
清酒だけだ。
新米をふんだんに使った酒からふわりと浮いた香は、露草の鼻を擽って部屋の中に静かに融けた。




