表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あいろこいろ  作者: カラクリカラクリ
本編
22/104

021


「はいるよ」


ぐいぐいと蘇芳の手を引いて、露草は躊躇うことなく奥座敷の襖を開ける。

普段は進んで近づかないが、こういうときの露草は決断したら早い。


「なんだ?」


珍しく紋付き袴を纏った木路蝋が唐突に入ってきた二人を見遣って訝しげに眉を顰めた。


「今日の宴会、蘇芳も混ざっていいよね」


挨拶もなく本題を口にする露草に、木路蝋は袴の裾を払って腕を組む。


「好きにしろ。だが、本家と分家の人間が適当に揃うんだ。肩身が狭い思いをしても、俺を詰るなよ」

「どういう意味さ」


苛立ったように眉を上げて露草が詰め寄ると、溜息をついた木路蝋が、酷く呆れたような視線を投げた。


「この程度の思慮が及ばないくせに、俺と対等なつもりでいるのか?」

「なっ」


声をあげようとした露草と木路蝋の間に割って入って、蘇芳は露草の言葉を遮る。

此処で喧嘩をしても始まらない。

そもそもそうこうしているうちに宴会が始まってもおかしくないのだ。

蘇芳は木路蝋をちらりと見上げる。


「末席に連なる許可は出た、ということですよね」

「お前が参加する価値を見出せるかは知らないがな」

「良いんです」


強い口調が予想外だったのか、木路蝋は一瞬目を丸くしてから思いついた様に口元を歪めた。


「なるほど、今様か」

「木路蝋さんには関係ありません」


少なくとも一度は今様の意見を通して、露草の護衛から外したのだ。

珍しく憤りを表に出している蘇芳に、木路蝋は喉の奥で低く笑っう。


「取るに足りない虫けら」


きっと睨んだ蘇芳に、木路蝋は肩を竦めて見せた。


「お互いそう言う認識をして、相手にしないだけの分別があると思っていたんだがな」

「木路蝋、あんた」


不機嫌に声を上げた露草を制して、木路蝋は二人を追い払うように手を振る。


「俺は、お前達の情には興味がない。もともと原因は露草、お前だ。そろそろ上手く動くことを覚えろよ」

「はぁ? 何言って」

「今様もそれも、お前を巡って争ってる訳だろ。自覚しろよ、色男」

「なっ」

「木路蝋さん、露草に変なこと吹き込まないでください。露草、さっさと行きましょう」


心底呆れたようにため息をついて、蘇芳は開いた襖に向かって露草の背中を押した。

露草を廊下に押し出して、蘇芳はふと気づいて部屋の中を振り返る。

一言、言い忘れていた。


「あの」

「まだ文句でもあるのか?」


うんざりしたように、木路蝋は顔だけ振り返る。


「お誕生日おめでとうございます」


それだけ言って廊下に消えた蘇芳は、だから木路蝋の鳩が豆鉄砲を喰らったようないつになく面喰った間抜けな表情を見ることはなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ