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長い秋物の白いコートのポケットに両手を突っ込んだまま、蘇芳は校門の前で一瞬だけ足を止める。
口の中で何事か呟くと、案内もないまま蘇芳は楽しそうに校内に足を踏み入れた。
歩く度に、帽子から覗く髪がぴょこぴょことはねて、ただでさえ幼い蘇芳の見た目を、更に幼くみせる。
授業時間ではあるが、校内を歩く生徒はそれなりにいて、時折訝しげな視線が追ってきたが、蘇芳は少しも気に止めることなく歩を進めた。
本来の授業時間に出歩く生徒がいるのは、此処、霧ヶ峰学園が大学と同じく単位制の学業システムを取り入れているからだ。
生徒は自分に合った授業を選択し、カリキュラムを組み立てる。
そのため、空き時間というものが存在し、授業時間とはいえ、校内を自由に歩き回る生徒はゼロにはならない。
蘇芳は勝手知ったるとばかりに校内を進み、漸く見知った後ろ姿を見つけて顔を綻ばせた。
「やぁ、露草」
「うわぁ!? って、何だよ! どうしてあんたがいる訳!?」
「そんなに喜んでくれて嬉しいです」
目を丸くした幼馴染みは、それから大袈裟に驚いたことにばつが悪そうに目を細める。
「別に喜んでなんかないだろ。それより、なんで此処にいるのか、さっさと答えなよ」
「うーん。露ちゃんだったら暗黙のうちに理解してくれると思ったんですけど」
そう口にした途端、露草は嫌そうに眉を顰めた。
「ちゃん付けするな」
「失礼しました。明日付けで、転校生です。よろしくお願いします」
蘇芳がぴょこんと頭をさげると、露草はため息をついて腕を組む。
「はぁ? 9月からとか、中途半端すぎ」
「そのあたりは、ほら、家庭の事情で誤魔化せます」
「まぁ、良いけどさ。宜しくしてやるから、変に目立たないでよ」
ぶっきらぼうに言い捨てた露草に、蘇芳は嬉しそうににこりと笑った。




