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あいろこいろ  作者: カラクリカラクリ
本編
18/104

017


対面でお弁当を突く露草をちらりと見て、蘇芳は小さく溜息を零す。

午前中の二コマ目の授業は開始すれすれに飛び込んで、露草の隣の席に座ったが、その時から既に露草は不機嫌オーラを纏っていた。

元々、真面目気質で、そのうえ本人は否定するがなかなかの世話焼きだ。

転校生という世間知らずの世話係として、授業をサボる等というのは言語道断に違いない。


「(木路蝋さんが、うまく説明してくれたら楽なんですけど)」


面倒なことは絶対にやってくれないとは解っているが、つい文句も言いたくなる。

昼間働けと言ったのは、他でもない彼なのだ。


「ちょっと、昼ご飯がまずくなるから辛気臭い顔しないでよ」


溜息をつきかけた蘇芳は、飛んできた露草の言葉にはっと顔をあげる。


「辛気臭い顔してます?」

「してるよ」

「すみません」

「謝るくらいなら、少しは楽しい話でもしなよ」


少し柔らかくなった不機嫌オーラに、蘇芳はほっと息をついた。


「いつにない無茶振りですね、露草」

「はぁ?別に、僕は」

「じゃあ、面白い話します」

「そういう話に限って、面白くないよね。あんた」

「それじゃあ、どうしろっていうんですか」


むぅと眉を顰めると、露草は不意に蘇芳の弁当箱に視線を落として、親の敵にでも出会ったような顔をする。

視線の先に気付いて、蘇芳はあぁと頷いてそれを箸で摘んだ。


「相変わらず、嫌いなんですか?」

「食べる人間の気がしれないね」

「美味しいと思いますよ」

「有り得ないんだけど」


露草は昔から茸が嫌いだ。

種類に構わず、全て。

だから、蘇芳がぱくりと口に入れた占地に嫌そうに目を反らす。


「茸嫌いだと、大きくなれないらしいですよ」

「すぐ解るような嘘つくの止めなよ」


呆れたように肩を竦めた露草は、もういつもの露草で、蘇芳は解らないように息をついた。

露草の機嫌を損ねたくはないが、露草の護衛を全うするためにも、木路蝋の依頼はさっさと検討をつけたい所だ。


「(はったりでも、かけてみましょうか)」


ある人物を思い浮かべて、蘇芳は新たに摘んだ占地を口に入れた。

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