修学旅行開始と悲劇
菜々美→雅治という順番です。
「こっちでしょ」
「いや、こっちだろ」
「こっちに決まっているよ」
「こっちだよー!」
はい、私達の班はただ今猛烈に困っています。
生徒会メンバーが「行きたい場所がある」と声を揃えて言ったからそこに行こう、という話になったんだけど……。
生徒会、絶賛仲間割れ中。
何でこうなるの!? というか行きたい場所の順番決めてなかったの!?
ていうか、何で丁度十字路で方向が4つともバラバラなの!? 逆にすごいんだけど!
って、そんな場合じゃない! 早く決めなきゃ折角の自由時間が無くなっちゃう!
「えっと、とりあえずジャンケンで決めない?」
「「「「それで最初に行けなきゃ納得いかない」」」」
「………さいですか」
この生徒会、仲が良いのか悪いのかわからん。意味不明だ。
そう思っていると、さっきまで黙って見ていた友理奈が話しかけてきた。
「そういう菜々美は行きたい場所は無いの?」
「え? 私? うーん……特に無いなぁ」
「そう……」
ちょっと、何でそんなに深い溜め息をつくのさ。
まるで決めていない私が悪いみたいじゃんかよ。
「ねぇ、ななみんは行きたい場所あるの?」
「そうだな、宮本に決めてもらうのがいいかも知れないな」
「はいっ!?」
何でだ!? 何でそこで私にふる必要があるんだ!?
だけどこれ、決めなきゃ駄目だよね……雰囲気的に。
「えっと、じゃあ……」
「「「「じゃあ?」」」」
「みょ、妙心寺で……」
「当然だね」
「まぁ、菜々美ちゃんが決めたなら仕方ないか……」
……………あれ? もしかして、もしかしなくても、責任転嫁させられた?
あの後私達は妙心寺の他に3人が行きたがっていた金閣寺、二条城、東映太秦映画村に行き、友理奈が行きたいと言った三十三間堂にも行きました。
そして今は北野天満宮で七不思議の話を聞いています。
「………なんです。そして……」
説明を聞きながらその場所をぐるりと回っていた、その時。
『あ……の………をちょ…だ……』
「え……?」
突然聞こえてきた声に振り向きその場所を見てみたが、そこには誰もいなかった。
(気のせい、だったのかな…?)
そう思ってついて行こうとした瞬間だった。
『あなたのイノチをちょうだい…!!』
――――目の前に、全身血まみれの女性が現れた。
「きゃぁぁぁぁああぁぁあああぁぁあっっ!!!」
怖くなった私は皆が呼んでいるのに答えず、そのまま走り出した。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「きゃぁぁぁぁああぁぁあああぁぁあっっ!!!」
菜々美君の叫び声が聞こえて振り返ってみると、そこには向こうに走り出した菜々美君と菜々美君を追いかけている全身血まみれの女性がいた。
(まさかこんな所まで菜々美君の超能力が狙われているなんて…!)
不覚だった。
菜々美君が狙われていることは前からわかっていたんだから、傍にいて守ってあげるべきだったのに…!
「永原さんはここにいて! 菜々美君は僕達が様子を見に行くから!」
「え、あ、ちょっと!?」
永原さんに短くそう伝え、僕達は一斉に菜々美君の行った方向に走り出した。
頼む、無事でいてくれ――――!!