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夏恋  作者: 浅色
6/10

夏恋6

少し不思議な物語。

(行かないで・・・・美帆・・・・・)


扉が閉まって、それは彼女を連れて行く。



ガタンゴトン、

ガタンゴトン、



(どうして・・・)


「さよなら・・・・・・」



そう言った彼女は無表情だった。

どうしてそんな事を言うのか、自分が何をしたのか。

なぜ、どうして、そんなことばかりが頭の中をぐるぐる渦巻いていた。

電車が彼女を連れ去ってしまった。

まるで母親とはぐれて迷子になった子供のように、ずっと一人で立ちつくしていた。


何がどうなってしまったのか分からなくて、ただ彼女が遠くへ行ってしまう気がして。

それだけが分かって、それがとても悲しくて。


(美帆ぉぉぉぉ!!!!!!!!)








いつの間にか、辺りは暗くなっていた。


(どこ・・・?おかあさん・・・・・?ここ、どこ?)


暗い道をひたすら走って探し回る。


(ハァハァ・・・い・・・やだ・・・こわい・・・・・!!!)


どこまで走っても続いていく闇。

止まったらもう動けなくなってしまいそうな気がした。

何に追われてるのかは分からない。

でも何かに追われている気がした。

怖い何か。

連れ去ってしまいそうな、何か。

捕まってしまったらもう逃げ出せない。


(いやだ・・・いやだ)


どうして逃げなければならないのかなんて分からない。

なぜ追われているのかも分からない。


(こわい・・・こわいこわいこわい・・・!!!)


ひたすら怖い何かから逃げた。

走って、走って、どこまでも走り続けた。

不意に足下がとられて、転んでしまった。


(あし・・・うごいて・・・・うごけ、うごけ!うごけぇぇぇ!!!)


辺りは一面の真っ暗な闇。

音は自分の声しか響かない。

寒くもないし、暑くもない。

風も吹かない。


それでも。


その何かが近づいてくる気配だけはある。


息苦しい、とてつもなく怖い。

嫌なモノ、ただそれだけは感じる。


そうして、闇が蔓のように足に絡みつき、伸びていった。

絡みつく闇を振り払おうと体を動かすが、走り疲れきった足は、手は、言うことを聞かない。


(やだ、いやだ、いやいや!!・・・い・・・やぁ・・・・)


闇の蔓は全身を覆い尽くし、そのまま見えない闇に引きずり込んでいった。


(うぁぁぁぁぁぁ!!!!)








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