夏恋5
たくさん泣いた。
友達の前でもこんなには泣かない。
でも、彼の前では・・・・。
(なんでこんなに泣いちゃったんだろう…)
不思議と、南には好意を持っていた。
なぜかは分からない。
前の彼氏にフラれて精神的にまいってるはずなのに。
(南さんといると、胸が高鳴る・・・)
今は南の座ってる隣で横になっている。
落ち着いてみると、こんなにも人の前で泣いたことは無かった。
なんだか急に恥ずかしさがこみ上げてきた。
「冷えてきたし、そろそろ帰りっ・・・・!!!?」
声を掛けようとして南の方に顔を向けると、友花の肩に南が寄ってきた。
「あ、あの…?!」
突然のことに戸惑ったが、様子がおかしかったので顔を覗き込むと、その顔は青白かった。
「だ、大丈夫ですか?!」
「あ、はは・・・ごめんね、だいじょうぶ…だから、ゴホッゴホッ」
「何言ってるんですか!体もこんなに冷たく・・・・え、あ…と、き、救急車!すぐ呼びますから!!」
大丈夫なんて無理しているが、危険な状態なのは目に見えていた。
夜風に長く当たっていたせいか、体も冷たい。
「南さん・・・みなみさん・・・」
しばらくして南はふもとの病院へ搬送され、緊急の手術が行われた。
友花は手術室の前のベンチに座り、体を震わせていた。
(私のせいだ・・・・ずっと夜風に当たって・・ずっと私に付き添って・・・・・)
涙が溢れてきた。
どうしようもない、どうすばいいのか。
行き場のない大粒の涙は友花のほおを伝って南の顔に落ちた。