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夏恋  作者: 浅色
3/10

夏恋3

「こんなキレイな虫、都会にはいないから…」

「そうだね、都会の虫は汚れてる…。虫も、空気も、人間も…」


その声が妙に悲しそうに聞こえたのはどうしてだろうか。


「あの…?」


一瞬だけこちらを向いて微笑んで、また蛍達の方を向いて、その人は言った。



「蛍っていうのはね、自然の川辺、それもとても綺麗な川でしか生きられない虫なんだ。籠に入れて都会に連れて帰っても、そう長くは生きられない。そして年々自然が減って…環境も悪くなってきているから蛍の数も減ってきている」


確かに年々自然は減っている。

しかし、見回せば山ばかりでとても自然が減少してるようには思えない。


「……こんなにキレイなのにね」


また声が悲しくなった。


「ま、そんなことはどうしょうもないからどうだって事じゃないけどね」


一変して声がさっきの調子に戻った。

少女はさっきのが聞き間違えたのかと耳を疑った。



「蛍ってこうやって手を伸ばすと寄って…ってあわああ」

「あっ!」


足下の石に躓いて、転びそうになったその人を助けようとしてこっちも躓いたため、二人とも川に落ちた。



「……」

「……」



一瞬何が起こったか分からず、お互いを見て呆然としていた。

数秒送れて、二人同時に笑い出した。


「ぷ」

「あははは!まさか君まで落ちてくるなんて、ははは」

「…はぁはぁ、だって、落ちそうだったからつい、あははは」


川の水は意外に浅かった。

足の膝くらいまでの水位で、夏の川の水がほどよく気持ちいい。


「もうずぶ濡れだなぁ…。っと」


と言って立ち上がり、まだ座り込んでる少女の方へ歩いてきた。


「大丈夫?」


そう言って手を差しだした。



「あ…、ありがとぅ…」


手を受け取り、立ち上がると目と目があった。


「君、名前は?」

「『三上…友花』」

「僕は香田 南。友花ちゃんはしばらくこの山にいるの?」

「私は、夏休み中はこっちにいるから…」

「そっか、僕もしばらくこっちにいるからまた会うかもね」


南が微笑むと、友花も自然と顔が笑みの形になった。


「って、うわぁ…すっかりずぶ濡れだな…濡れたままだと風邪引くからもう帰ったほうがいいよ」

「うん、そうする……クシュン!それじゃまたね、南さん!」

「あはは、お大事に〜」


苦笑を浮かべながら南は手を振った。




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