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第57話 レクイエム~2人の為に捧ぐもの~

おはにちは。

先日、久しぶりにアクセス解析見たんですよ。

PVが10万でユニークが1万だったかな? そのぐらいになっていて。

いつの間に……と、少々驚きました。


さて前回は因縁の相手との遭遇でした。

今回はその相手との決着です。ギャグは前回に続いて無い……か?


ちなみにそろそろ終盤が近付いてます。

今までに張りに張って「回収?え?なにそれ?」状態だった伏線を順次回収していく予定です。

疑問点などがありましたら、感想に書いていただければ1日以内に返答いたす所存です。暇なんですよ。


それでは長らく失礼しました。

どうぞ、お楽しみください。

 俺がクルツを構えたタイミングで、理奈と冬紀がミュータントに特攻を掛ける。

 俺はそれを援護するように、フルオートで尽きるまで弾丸をばら撒いた。効いた様子は無かったが、足止めには十分効果的のようで、続け様に冬紀が日本刀で切り掛かる。しかし刃先がミュータントの身体に接触する前に、奴が腕を振り上げたのに危険性を感じたのか、切り掛かるのを止めて横に飛び退いた。

 ミュータントの腕が空を切ったと同時に、今度は理奈がライオットガンを2発、ポンプアクションで放つ。12ゲージの装弾(ショットシェル)が奴の動きを阻害し、隙を誘った。

 俺は再装填(リロード)を迅速に行い、ミュータントをかく乱する為に奴の周りを距離を保って走りながら、引き金を一定の間隔で引き続ける。

 遠巻きで早織がVSSの援護射撃をしている中、俺が引き金から指を放して、前衛組が攻撃できる間を設けた。理奈がミュータントの横を走り抜けながら3発の12ゲージをめり込ませると、冬紀がイサカM37でミュータントの右脇に向けて引き金を引いた。


 脇ならば筋繊維はそれほど厚くないはずだ。そう思っての攻撃だが、冬紀が撃った弾は予想通りに右脇を貫いてくれた。

 オーバーリアクションじゃね? という位の大きなうめき声を上げて、ミュータントは痛みからか地に片膝をついた。

 やはり筋繊維が攻防の要だったのだろう。俺の予想は当たってたのだ。となればやることは変わらない。奴の身体ん中にどデカイ衝撃を与えるだけだ。


冬紀がミュータントから距離を取り、もう一度、連携突撃(コンビネーションアサルト)を仕掛ける準備をする。俺含め4人が4人距離を取って、再装填(リロード)をしながらミュータントの様子を窺っていると、奴は動かなくなった右腕を自ら引き千切り、理奈と冬紀に向けて勢い良く投げ付けてきた。


『!!?』


 投げ付けられた2人は奴の突然の行動に反応できず、もろに直撃を受けてしまった。まるで鉄骨でも乗っているかの如く腕の下敷きになった2人を援護するために俺が前衛に回る。

 早織には腕をどかす役割に回ってもらい、実質、戦うのは俺1人となってしまった。


「ちぃっ! 俺が相手になってやる!!」


 フルオートで奴の傷口へ引き金を引くが、今までと違い素早く動き始めたせいで上手く当たらなくなってしまった。

 あんな芸当が出来るなんて、考えても見なかった。

 ただそれを悔やんでもしょうがないので、今は奴を食い止める事に集中しなければ。


「スピードはそれほど速くない。落ち着いて対処すればやれないことはないはずだ……!」


 言った直後、ミュータントが右からタックルを仕掛けてきた。

 それをバックステップで回避し、クルツを使う。が、傷口が俺とは真反対に回っているため、さしてダメージにはなってないようだ。

 ミュータントは左腕を振り上げて、俺に、ではなく、地面に腕を振り下ろした。


「っぅ!?」


 弾け飛んだコンクリートの破片が俺を襲い、傷までには至らなかったものの、一瞬の隙を作ってしまう。それにすかさずとばかりに、ミュータントがボディブローのような格闘攻撃を食らわせようとする。

 俺は間一髪のタイミングで半身を引いた。

 腕が腹に掠ったが、何とか避ける事に成功した。しかし、避ける事にだけ集中していたために、クルツがミュータントの攻撃を受け、自身の部品を撒き散らしながら遠方へと弾かれてしまう。


「しまった!? ……くぅっ!?」


 クルツが破壊された事に若干の動揺をしてしまうが、大急ぎでミュータントから距離を離し、ひとまずの安全を確保した。


 ただの力馬鹿だったミュータントが無駄に戦略性を身に付けやがった。

 一体全体どういうことなんだ? 学習しているんだろうか?

 どちらにしろ今まで出会った3体の内、一番厄介なのは言うまでも無いな。

 おふざけで勝てる相手じゃない。しかも周りのゾンビにも気を使わなけりゃならねぇなんて。……少し、無茶するしかないな。


 俺はレッグホルスターからUSP自動拳銃を引き抜き、弾薬ポーチから保持していたS&W M37リボルバーを取り出した。

 拳銃弾じゃミュータントの足止めにはならないだろう。

 数で勝負するしかないか。

 安全装置(セーフティ)を外し、長らく沈黙を保っていたミュータントへ向けUSPを3発放った。


 奴は千切った右腕を庇う様に左半身を突き出し、芸の無いタックルで突撃してくる。

 案の定弾かれた9ミリに「そんなもんだろうな」という感想を抱きながら、軽やかな左ステップでタックルを回避し、左手のM37で向かってきたゾンビをヘッドショットしつつ、右手のUSPでミュータントの傷口を狙う。

 だが、振るった左腕に9ミリは全て弾かれ、そのまま奴は振りかぶった腕を地面に振り下ろす構えを取った。


「2度も同じ手は食らうか!」


 地面に振り下ろされた腕に対し、俺はバックステップで破片の射程外へと避難、続いて向かってきたミュータントを回避しようとした時、俺のものではない銃声が響いてミュータントが横転した。

 視線を銃声の方へ向けると、腕から抜け出した冬紀がイサカを構えて安堵の息を吐いているのが目に映った。後ろでは理奈と早織も同様の反応を示していた。


「遅い遅い遅い! お前らの血は何色か!!」

「赤色の何ものでも無いと思うよ。というか何でそこまで罵倒されなければならないんだ」


 冬紀が何か言っているが無視だ! 俺ばっかりに仕事させてんじゃねぇよ!

 とまぁともかく、立ち上がったミュータントを視界に収めつつ、俺は理奈と冬紀の2人を見る。


 2人ともボロボロで、弱音を吐きはしないが限界が近いことは明白だった。早織も精密射撃と周囲のゾンビの圧迫感で精神をすり減らしているみたいだ。随分と疲れた顔をしている。

 あまり時間は掛けられない。次でおそらく最後となるだろう。


「理奈、冬紀」

「ん?」

「なんだい?」


 ゆっくりと歩くミュータントと迫った空気に決着が近い事を悟り、普段の俺とは想像もつかないほど真剣な表情で2人に告げる。


「最後だ。と言えば分かるな?」


 今までの和んだ雰囲気とは一転、2人だけでなく早織まで真剣な雰囲気になり、その中で2人は首をゆっくりと縦に振った。

 それだけでもう俺たちに意思疎通は必要無かった。

 共通の認識と目的が共有できた人間ほど強いものは無いってな。


「カウント3で奴に(くさび)を打ち込む」

「誰に合わせれば良い?」

「俺に合わせろ。だがアタッカーは各々に任せる」

「ラジャー!」


 こういう時(どういう時だ)に親友の存在は大きいな。

 言葉が少なくても分かってくれるし、何よりやりやすい。

 ミュータントが10メートル位まで近付いたタイミングで、俺たちは同時に奴の周りへ散開した。


 理奈のライオットガンと冬紀のイサカが多重奏を奏で、ミュータントを挟み込むように左右へ分かれる。奴は傷口を抱きかかえるように左腕を盾にし、防御の構えを取った。

 俺はその隙に奴の後方に回り込み、傷口を重点的に狙う。


 俺と冬紀が同タイミングで突撃すると、ミュータントはしめたとばかりに防御を解き、左腕を振り回して周囲を薙ぎ払う行動に出た。それを予測していた俺と冬紀はミュータントの間合い手前で立ち止まり、冬紀はイサカ、俺はUSPで奴をけん制する。


 左手のM37をポーチで保持しなおし、ベルトから久しく使っていなかった短刀を抜き放って、ミュータントの頭上を越えるようにその短刀を放る。

 その向こう側にいた理奈がそれを受け取り、隙だらけのミュータントの傷口に短刀を突き立てた。


「終わりだバカ!」


 傷口を抉るように突き刺さった短刀をそのままに、理奈がミュータントから距離を取る。うめくミュータントが腕を振り上げた瞬間、


「早織。自分で背負った仇は自分で閉めろ」


「……言われなくても」


 銃声など無い静かな幕引きが切って落とされた。

 放たれた弾丸が短刀の刀身を掠め、一際甲高い金属音が辺りに響いた。

 それに共鳴するように、ミュータントの身体がどういう原理か膨張していく。

 そしてその膨張が頂点にまで達した時、いつか見た時と同じ破裂がミュータントを内から弾けさせた。真っ赤な血と肉片が奴のいた地点を中心に波紋のように撒き散らされ、それきりもう、ミュータントだったものは動かなくなった。


 早織が幕引く敵討ち。

 一番美しい終わり方を迎えて、俺たちの過去は愁いを無くした。

 香澄さん、田代さん、これで貴方たちは笑えますか?

 願わくば、その笑顔を早織と共に。あいつの心を守ってやってください。


 経った時間を忘れる黙祷を捧げ、俺たちは早織の下へ駆け寄る。


「早織」

「……なによ?」


 俯いている早織をあまり見ず、頭に手を置いて出来るだけ優しい表情で笑いかけた。冬紀も理奈も辺りのゾンビを警戒するように、それと無く視線を外してくれた。


「頑張ったな。…………帰ろう」

「…………ぅん」


 声が消え入りそうだったのと、震えていたのは思考に含まれない。

 ただ、俺は髪を梳くように撫でた。それ以上行動しないし、何も言わない。

 その空間には音は無く、ゾンビのうめき声さえ聞こえない。

 場にあるのは、唯一、たった1つの感情だけだった。

いかがでしたでしょうか?


ゾンビの正体、ミュータントの本当の弱点、その他は後々明かしていきます。


このパラドックスを起こしたのは誰なのか?

そんなことをする理由があったのか?

ゾンビとはなんなのか?


皆様の予想を良い方で裏切ることは難しいと思いますが、楽しめていただけたら何よりです。


御意見御感想をお待ちしています。

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