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第47話 出会う奴には気を付けろ。出会わない奴にも気を付けろ

お楽しみください

 俺たちは早織、サクラ、姉貴、円さん…………それと藤崎(えっ? ……忘れてないよ。うん)と合流すると、立体駐車場内のゾンビ(居るか知らんけど)の掃討に乗り出した。理由は簡単。駐車場内のゾンビを全て倒してしまえば、事実上、ショッピングモール内のゾンビは居なくなったことになる。……多分。


 警備室にでも行けば監視カメラで一目瞭然だろうが、それは後回しだ。先のことを案じるより、今の危険をどうにかするのが俺流だからだ。


 ともかく駐車場内にゾンビが居ないことを確認した俺たちは、ようやくショッピングモール本館へと進入した。


「このショッピングモールは初めて来たな」


 今は最上階である5階。まぁ屋上とも言うんだけどね。

 ここは駐車場直通のイベントスペースみたいなところのようで、立体駐車場を登って行ったらここに着いた。

 ここも駐車場の一部だからか、それとも建物の5階としてだからか、コンクリートの屋根が作られていた。と言っても、駐車場の延長みたいな質素なものだが。


「遠いものね」


 俺の言葉に、早織が追加で理由を述べてくれた。こうして話すのも久しぶりのような。

 ちなみにさっき話した限りでは、早織は戦力として数えられるほど成長したとか。

 何でも幼い頃から田代さんと一緒にいたせいか、銃器の知識と扱いを自然と覚えてしまったらしい。

 俺が居なくなってから銃器を使っている内に思い出してきた、と本人は語っている。それと得意なのは実戦射撃じゃなく狙撃だとも言っていた。


 香澄さんの銃に田代さんの技術。あの2人は早織の力となって生き続けているんだな。俺は素直な感想として、そう思った。


「僕は市外だから機会ないしね」


 冬紀は銃器の扱いが少し上手くなっていた。とは言っても、ヒヨコにトサカが出来てきた程度だが。

 やはり剣道少年には銃より刀剣の方が割に合うらしい。おかげで近接武器の上達は銃の何倍も早かったとか。やはり冬紀は根っからの剣士のようだ。頷ける。


「アタシは家の近くのスーパーの常連だしな」


 理奈は持ち前の運動神経に磨きが掛かったと言っていた。事実はどうか知らないが。

 銃器の扱いも上達し、実戦射撃ではパーティー1らしい。(俺が居ない時)

 狙撃はてんでダメだが、散弾銃(ショットガン)と相性が良いらしく、少ない弾薬で最大の戦果を挙げられるまでに成長したとか。


「あ、それ私もです!」


 円さんはあまり前線には出ないようだ。専ら藤崎と狙撃中の早織の護衛を専門として戦ってきたらしい。


「お姉さんも!」


 姉貴は人並みに戦えるようになったらしい。今でもMPSを愛銃として、後方支援に勤しんでいるとか。


「私は来たことあるけど、あまり詳しくは……」


 サクラは護身槍術を生かし、多対戦を得意としているらしい。

 銃器は得意じゃないらしく、申し訳程度にベレッタ90ーTwoを装備している。使えるかどうかは……知らない。


「サクラさんと同じです」


 藤崎は…………まぁ、うん。ボチボチだな。


「……何か言いました?」

「気のせいだろ~。ハハハハ……」


 言えない。会話の内容を忘れたなんて言えない!


「…………はぁ」


 後方からアーティのため息が聞こえた気がした。……多分。


 とにもかくにも俺たちは今、屋上のイベントスペースからの室内進入を試みようとしていた。

 目的地は警備室。監視カメラの利用と拠点の確保。もしくは生存者との接触か探索をするためだ。

 監視カメラがある警備室は生存者にとって便利なものだから、いるとしたら警備室だろう。もし警備室にいなくても、監視カメラで探せばいい。

 ショッピングモールの食料や物資は限られている。まずは生存者と交渉しなければならないからな。


 事前の情報で警備室が3階にあるということは承知済みだ。そこから各階へ繋がる専用の通路があることも勿論知り得ている。つまりその通路を目指せばいいわけだ。……だが、


「でも、警備室へ繋がる専用の通路ってどこにあるんだ?」


 そう、当面の問題はそれだ。大抵こういう場所は、防犯上の理由や客が間違って入らないために、通路の入り口はカモフラージュされている場合が多い。それはここも同様のようで、通路の入り口は分からずじまいだったのだ。

 通路さえ分かれば、わざわざ3階にまで行って客用のデッカい張り紙が扉に張ってある警備室の扉を叩く必要はない。


 まぁもっとも、専用通路が分かったところで鍵が掛かっていれば無意味なのだが。


「それは後にしよう。まずは3階の警備室まで行って生存者の有無を確認しなきゃな」


 専用通路は警備室まで行けば分かるだろうし。と言うと、8人は頷いて物資と武器の確認を始めた。


 俺は屋上にまで上げてきたハンヴィーの中を確認して、忘れ物はないか探る。

 武器や物資を置いていけば持って行かれる可能性があるからな。その辺りは抜かりがないのだ。


 ハンヴィーから離れ、俺も装備の確認を入念にする。


 今回はゾンビを誘い出す意味を含めて銃器で戦おう。外に関しては問題ないとして、内に1体でもゾンビがいればそこから感染拡大してしまう恐れがある。故に今回は繊滅戦だ。銃器は……MP5(クルツ)で行こう。

 本当はXー7を使いたかったが、東野でのミュータントの攻撃、連日の使用、完全整備(フルメンテナンス)の欠如などの問題を受けて、少しながらも動作不良が起きてしまった。まだ撃つなどの動作に問題はないが、さっきのゾンビ3体をヘッドショットした時から、Sモードへ切り替えられなくなってしまったのだ。

 ライオットガンは理奈が気に入ってるみたいだし、俺は理解を深めるためにも別の銃器を使ってみることにした訳である。


 マガジンをクルツに装着し、コッキングレバーを引いて薬室(チェンバー)に弾丸を装填する。

 セレクターレバーを単射(セミ)に設定すると、俺は室内への入り口へと歩きだした。


「行くぞ」


 途中、歩きながらそう言い、みんなが頷くのを確認してから、入り口の扉を開け放った。


 中には使えるのか分からないエレベーターと稼動を停止したエスカレーターがあるだけで、他にはベンチぐらいしかなかった。どうやら5階はイベントスペースしかないようだ。

 下へと降りるエスカレーターをのぞき込むと、動かないだけで然したる問題は無いように見える。


 俺は指で合図すると、アーティに殿(しんがり)を任せて一足先に下へ降りた。


「誰も……いないな」


 辺りを五感で探るが、店内は荒らされた様子もなく、人が居る気配もしなかった。

 上の冬紀に親指を立てて、安全確保を伝える。程なくして8人が降りてきた。


「アーティ。何か気配は?」

「………………いいえ。感じないわ」


 念のためアーティにも確認させてみるが、同様のようだ。ならばと、エスカレーターでさらに下へ降りた。

 3階に辿り着いた時、変な雰囲気が辺りから漂ってくる。それが何かは分からないけど、けして良いものではないことは断言できた。


「……誰だ」


 ゾンビか、はたまた生存者か。どちらにしても刺激しないように、小声で確認をとってみる。

 しかし当然のごとく、何も言ってくることはなかった。


 五感を最大限発揮し、360度全方向に注意を向ける。


 そして硬直状態のまま10秒を超えたところで、先方が動きを見せた。

 来るっ! 俺はそう直感して、一番異様な空気が強い場所へクルツを向けた。


「動くなっ!」

「っ!!」


 何かがクルツの銃口(マズル)の先で停止する。油断せずに先の何かを見ると……


「……人?」


 銃口の先にいたのは40代位の白髪の男性。シルバーフレームのメガネを掛けて、手にはバットが握られていた。


「君は……ゾンビじゃないのか……?」


 俺はゆっくりと頷く。むしろゾンビに見えるのかって話だけどな。

 男性は納得がいったようで、振り上げていたバットを下ろした。

 どうやらさっきの異様な空気はこの男性の気配だったようだ。もしかしたら殺気と言うやつかもしれない。


「あなたはここの生存者ですか?」


 情報収集のために問いかけるが、


「ああ、そうだけど。それとそのMP5(クルツ)を下ろしてくれるかな」

「あ、すいません」


 礼を欠いたことを指摘されて、急いでクルツの銃口を下に向けた。……?


「どうしてこの銃の名前を?」


 MP5は日本のSATや空港警備隊などたくさんの場所で使用されているから見たことはあったとしても、これがそれを小型化したMP5(クルツ)だというのは分からないはずだが。もっとも、ガンマニアなら話は別だ。

 そうゆう意味合いを持たせた言葉をぶつけると、男性はハハハと笑って訳を話し始めた。


「私は兵器製造の工場に勤めていてね。そう言うモノには詳しいんだ」


 なるほど、どうりで。珍しい職業についているんだな。

 俺が別の質問をぶつけようとした時、ふと後方から聞き覚えのある呻き声が耳に届いた。


「「……!」」


 発作的に声がした方へ銃口を向ける。そこには…………毎度おでまし、歩く屍が居た。

 視認できるだけで5体。何れも変異種ではなかった。


 俺はとっさにトリガーに指をかけ、片手で3発、手前のゾンビの額に浴びせる。

 反動で照準が少しブレたが、近くだったのが幸いして全弾命中した。


「次っ!」


 セレクターレバーを連射(フル)に設定し直し、今度は両手で2体のゾンビにばらまいた。

 数発外してしまったが、残りは的確にゾンビを無力化する。


 他の3体を相手にしている間に、残りの2体が結構近くまで迫ってきていた。

 しかし俺は冷静にバックステップで距離を置く。すると、視界の端でさっきの男性がバットを振り下ろしている姿が鮮明に映った。1体の無力化には成功したみたいだが、もう1体が男性に迫る。

 彼はゾンビに迫られているのに余裕で、俺の方へアイコンタクトしてきた。…………マジカヨ。


 しょうがないので、ご要望通りフルオート射撃で男性に迫るゾンビをケチらしてやった。


「…………危ないじゃないか!」

「あんたがやれって言ったんだろうが!」

「掠めるとは思ってなかったよ!!」

「俺は訓練された兵士じゃないから当然だろ!!」


 なにやら言い合いが起きてしまったが、無事にゾンビの撃退に成功した。


「良祐! 大丈夫か!!」


 銃声の影響か、上から降りてきた冬紀が心配そうな表情で駆け寄る。


「大丈夫だ。安全確保したし、みんなを呼んでこい」

「あ、ああっ!」


 とりあえずまぁ、無事な姿を見せて、冬紀にみんなを呼びにパシらせた。


「どうやら仲間がいるようだね」

「まぁ、アイツ含めて8人ほど」


 エスカレーターを急いで登っていく冬紀を見ながら、男性の質問に答える。


「そうか。じゃあ、立ち話もなんだね。警備室に案内するよ、リーダーさん」


 優しく言ってるのだろうが、俺には「聞きたいことあるだろう?」とまるで上から言っているように聞こえた。

 男性はそのまま歩き始め、先に闇に消えていく。しばらくその後ろ姿を見ていた俺は、4階から降りてきた冬紀たちと一緒にその後を追った。

いかがでしたでしょうか?


あまり話は進みませんでしたね。まぁしょうがないんですけど。

ちなみに良祐君の銃に関する知識は自前ではありません。田代さんから聞いたり、湊ちゃんから聞いたり、押収品資料を見たり、早織ちゃんから聞いたりしています。


…………受け売りばっかですね。御意見御感想をお待ちしてます。

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