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第44話 人間を超えた人間

おはにちは! らいなぁです!

トラブル発生! キーボードのkが使えなくなりました!

インターネットに繋げなくなりました! だから遅れましたー……。

……すいません。

 下水道をある程度進んだところで、マンホールから入ってきていた光が完全に見えなくなった。

 かと言って辺りが見えなくなった訳ではない。下水道の中は俺の予想に反して、意外と明るかったからだ。


「懐中電灯必要になると思ったんだけどな」


 これじゃあ折角持ってきた懐中電灯2つが無駄じゃないか。まあ、良いけどさ。

 ゆっくりとした足取りの中、油断せずに金属バットを構えつつ、最短のルートで目的地を目指す。こんなとことは一刻も早くおさらばしたいしな。

 そんなことを考えている間に、最初の分岐点にたどり着いた。


「最初は右だよな?」


 忘れている訳じゃないが、念のためアーティにも確認する。俺の独断でミスりたくないし。

 そんな考えを知ってか知らずか、聞かれた彼女は小さく頷き、肯定の意を示す。


「よし、行くか」


 アーティの同意を受け、進路を右へと向けた。

 そしてそれを数回繰り返したところで、大きな広間のような場所へたどり着いた。


「下水の集合する場所か?」

「…………でしょうね」


 アーティが言うんだから間違いない。

 ここは、ここら一帯の下水を集めて処理場へと持っていく中継なんだろう。もっとも、予想でしかないが。


「こういう場所ってあれだな。RPGだとボスが出るような場所だよな」


 なんて不謹慎なことを言うのはご愛嬌ってね。

 ただ、言うだけだったら愛嬌で済むだろう。しかし、


「そうね。肯定しておくわ」

「…………は?」


 愛嬌で済まないのが俺の人生だった。


「…………慣れたけども」


 十字でわかれた通路の3方向から、ゾンビがわらわらといらっしゃいました。本当に鬱だ。

 唯一ゾンビがいない後方、来た道を戻るように、俺たちはゾンビの群れから退却する。


「アーティ! 2番目に最短のルートはどう行く?」

「2つ目の曲がり角を左」


 俺は言われた通りの道を辿って、曲がった。すると、


 そこにもゾンビが居ました。はい。


「アーティ、出来ればゾンビがいないルートを教えてくれ」


 アーティは悪くない。俺がゾンビが居ないルートを教えてくれと言わなかったのが悪いんだ。彼女は俺が言った通りに、2番目に最短のルートを教えてくれただけなんだよ。うん。そう思って諦めよう。

 かと言っても戦闘は避けたかったんだがな。荷物が多いし。


「しょうがないわね」


 俺を読心していた(だろう)アーティは、渋々と言った感じでそう呟くと、一際素早く加速した。そのスピードは今まで見せた中で一番早く、まるで世界陸上が子供のお遊戯会に見えるほどだった。……このレベルの陸上競技だったら、視聴率50はいけると思う。

 100メートル6秒フラットよろしのスピードで駆け抜け、アーティは釘のような棒(後々分かったが音聴棒というらしい)で一番手前のゾンビを貫き、その状態で辺りのゾンビを蹴散らした。

 遠心力で棒から引き抜かれたゾンビは、勢いそのまま近くの壁に激突し、無惨にも肉片と化してしまう。

 すげぇ。アーティは2アクションで、数十はあったゾンビの大群を退けてしまった。


「貸し一つよ」

「……考え……とくよ」


 返り血で真っ赤になった顔で、アーティは妖艶に微笑んでいた。

 俺、この貸しと同価値のものを返せる自信、無いよ。肋骨の一本は覚悟しといた方がいいかもしれないな。

 後方から迫ってくるゾンビに急かされて走りながら、仏のような顔で覚悟を決めていた。





「撒いたか?」


 辺りを確認して呟いた。アーティも首肯し、安全が確保できたところで足を止める。


「はぁ……前途多難だな」


 走りずくめの上に、数十キロの荷物を持ったままじゃさすがに疲れる。アーティが疲れていないのは荷物を持ってないからだと信じたいが。いやホント。

 だが、もうやばいかもしれない。いい加減に、十分な休息を取ってない体が悲鳴を上げてやがる。

 ゾンビ発生から6日目。最初の頃はリーダーとして、今は一個人として、休息が取れる日はなかったと言っていい。まあ、俺の気負いすぎともいえるが、それでもちゃんと寝たことはない。大体気絶だしな。

 理奈たちと一緒にいた頃はマシな方だった。別れてからと言うものの、アイツらが心配で熟睡できたことはなかったから余計だ。体が悲鳴を上げるのも無理はない。


 …………アイツら、元気かな?

 怪我してないかな? 病気になったりしてないかな? まさか……しんで……っ!


 俺なんかがどうなったっていい! アイツらを失うぐらいだったら喜んで死んでやる! でも……アイツらが死んだら……。俺には……何も残らない。


「そんなことないわ」


 また俺を読心していたアーティが、俺の思考に口を挟んだ。


「そんなことない!? お前に俺の何が分かる!!」


 また心を読まれた事への怒りか、はたまた俺の考えを否定された事への怒りか、俺は怒りを隠す気も無く声を荒げた。

 このことで彼女は反省すべきだ。少なくともそんなことをあわや期待して言ったつもりもあるのだが、アーティはしかし。


「ほぼ、すべて」

「!!?」


 今、彼女はなんて言った? ほぼすべて?

 嘘だ。そう思う心の中で、本能が訴えかけている。

 嘘だ嘘じゃない嘘だ嘘じゃない嘘だ嘘じゃない。

 その2つが渦巻き、やがて俺の中で一つの言葉が浮き彫りにされた。


 アイツの言葉は嘘じゃない。


「貴方が生きてきた約12年間を、私は、すべて、知っている」


 恐怖。まず感じたのは圧倒的な恐怖。

 それはアーティと初めて会った時と同様の、恐怖。


 そして疑問と、謎。

 なぜ彼女はそこまでのことを自信満々に言えるのか。


「お、お前は……誰なんだ?」


 震える声で、無意識に絞り出した言葉は、アーティの雰囲気に包まれ消えた。

 彼女はゆっくりと瞬き、開いた瞼に隠されていた瞳は、赤く、紅く、血のように真っ赤だった。しかし、その瞳に見つめられた俺は、凍えるような寒さを感じ、体の震えが増す。

 そして……彼女は語る。


「私はアルテミス。月と狩猟の女神の名を冠する者。そして……人間に替わってこの地に君臨する、新たなる人類」


 全ての思考が凍結(フリーズ)する。理解が出来ない。

 彼女はなんて言った? 人間に替わる新たな人類だと?


 怖い。彼女が言っている意味が分からない。

 何故なら、彼女の言葉が嘘じゃないと……本当だと分かるから。本能で分かるから。

 だから恐怖する。言っている真実の意味がわからなくて。理解が出来なくて。


「そんな……」


 怖い、怖い、怖い。

 彼女の真紅の瞳に、俺の中の何か……奥底の……細胞のレベルで恐怖している。

 彼女は俺の12年間を知っている。彼女は全てを知っている。人を超えた人として知っている。

 すべては彼女の手の中だ。


「ねぇ、良祐」

いかがでしたでしょうか?

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