第40話 「番外編」 軽食喫茶リリアンの日常
おはにちは、らいなぁです。
まあ、タイトル通り番外編です。
番外編で話を詰め込みすぎてもしょうがないので、文字数少なめです。
息抜き程度にボケーッと見てください。過度な期待は厳禁です。
ではお楽しみください。
これはゾンビが発生した日、2012年8月1日から1年遡った、2011年の話である。
林名高校から中心部に向かった途中にある商店街。そこに、少し古びた外観の軽食喫茶があった。
それこそ、魔女の宅○便とかで出てきそうな、今時には無い珍しい建物である。
その店の名前は、『軽食喫茶リリアン』という。日本人の名前と言われれば、違和感が多少どころじゃなくあるが、外人の名前と言われれば、不思議と納得出来そうな名前だ。
話はリリアンの事ではなく、このリリアンで働く1人の女子高生の日常を綴る話だ。
その話をする前に、まずは店内に入ってみよう。今日はシフトが入っているはずだから、少女は居るはずだ。
「いらっしゃいませ!!」
元気印でとても宜しい。今回の主役の少女、彼女は店長の趣味であるメイド服を見事に着こなし、満面の笑みで客に対している。水色を基調とした、ミニスカメイド服が何とも言えない。彼女特有の赤みがかった髪が、相する水色のメイド服と不思議とマッチしている。
ここまで自然に着こなせるのは彼女ぐらいじゃないだろうか?
秋葉原のメイド喫茶だと、やらせ感が如実なのに対し、彼女はとても自然に接客できている。こんな子が居れば、普通だったら店は繁盛しまくっている事だろう。しかし、店はあまり人が居ない。精々5〜6人だ。
「今日も微妙に人が居るな」
客の少年が、皮肉とも取れる言葉を何の躊躇いも無く発する。
それを聞き、客の姿を確認した少女は、明らかに嫌な表情をしだした。
「お〜い、客、客。嫌な顔しない」
とは言ったものの、少女はまったく変えようとしなかった。
やはり仕事場に知り合いが来ると、何とも言えない感覚になるよね。
ようやっと表情を普通に戻した少女は、溜息混じりに頭を掻く。もはや先程の雰囲気は皆無である。
「来るなって何回も言っているだろ〜?殴るぞ、良」
「殴るのは勘弁してくれ。大体な、俺はお前の為を思って毎回来てやってるんだぞ?分かっているのか、理奈」
客の少年の名前は『良祐』。リリアンで働く少女の名前は『理奈』という。言わずもがなな2人である。
「まあ良いけど。いつものコーヒーよろ」
「えー」
「だから俺は客だ!!」
良祐が怒鳴り散らして、ようやく理奈はカウンターの向こうに居る店長にオーダーを出す。
その間に、良祐は入り口からカウンター席に座っていた。
「毎回飽きずによくやるね、良祐君」
コーヒー用のカップを取り出しながら、見た目3〜40ぐらいの男性が何時もの様に笑う。
この人が、この『軽食喫茶リリアン』の店長。従業員の制服にメイド服を採用する、所謂変態だ。
「挨拶代わりですよ。親しき仲にもなんとやらです」
「ふふっ、そうかい」
雰囲気的には紳士だが、メイド服のデザインはこの人が考えたものだ。
これだけは忘れてはならない。この人は紛う事無き変態だと言う事を。
「ていうか今日は何しに来たんだよ?」
何時の間にか別の客の接客をしていた理奈が、良祐の右隣に座ってそんな事を聞いた。
「冬紀が部活だから暇で暇で」
血涙すら出しそうな雰囲気で、良祐は遠回しに「遊ぶ相手が居ないから暇だ」と言い放った。何様だコイツ?
「そうかよ……」
理奈は少し、暗い影を落としてしまった。
それは自分に向けたものではなく、良祐に向けたものだ。何故なら、良祐の黒歴史からおよそ1年。2011年とは、彼の心が癒えて間もない頃だからだ。――――と言っても、
「なーに暗くなってんだよ!」
本人は全く気にして無い様子だが。彼は頭がオカシイと思う。
良祐は理奈の頭を乱暴に撫で回して、自分は無事だとでも主張する様に笑っていた。
「やめろぉぉぉ!」
理奈が撫で回される頭を押さえて、めっさあたふたしている。萌えた。
「仲睦まじいね」
店長がニコニコしながらカップをテーブルに置いた。中には良い匂いのコーヒーが入っている。
「どこがですか!!?」
今も変わらず頭を撫で回されている理奈が、心外だとばかりに驚愕していた。
いかがでしたでしょうか?
次回からはまた本編となります。
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