第39話 撃ち貫くと言っても、拳銃ではなくパイルバンカー
お楽しみください
俺はポケットから手榴弾を1つ取り出し、ピンを引っこ抜いて後ろに放る。
足を止めずに、頃合いを見計らって通路を右に曲がった。さっきまで進んでいた場所で、小規模の爆発が響いた。
「室内だと響くな」
壁や床、天井を伝って、爆発による振動がここまで届いてきた事に若干の感動を覚える。
…………別に爆弾魔だから感動した訳じゃないよ?
「それは誰も聞いて無いわ」
さて、アーティの鋭いツッコミも入った事だし、真面目にやりますか。
少し後ろに振り返る。俺たちを追っかける蛇の数は減った感じがしない。まあ、こんなんで終わるはず無いよな。
「とりま、最初の広大な空間に戻るか」
丁度近くだし、俺としても狭い空間は得意じゃない。
だがそれも、相手にも同様に言える事だがな。はあ、今回も骨が折れそうだ。
「頑張って〜」
心無いアーティの応援が余計に俺のやる気を削いで行く。他人事みたいに言いやがって。
止まりかかる足を気力で動かし、正面にあった扉を全速力で抜ける。その先は一番最初の広大な空間だった。
「予想通りだな」
実を言うと、地形をあまり把握してなかった俺。ほとんど勘で近くとか言ってました。
とりあえず中心の辺りまで走って振り返ると、大量の蛇が向かって来てました。はっきり言って、
「キショイ」
――――です!だって万ぐらいの量の蛇が一様に俺たちに向かって来るんだぜ?気持ち悪いだろ?
「否定はしないわ」
ほら、アーティも言ってるぜ?…………雑談はこれぐらいにしよう。
見れば蛇たちの様子が変だ。拡散して向かっていた筈の蛇の群れが、何故か一箇所に集まりだしている。ハッキリ言って嫌な予感しかしない。
「こういうパターンってアレだね。GATTAIパターンだね」
嫌な予感っていうのは往々にして中るものだ。
蛇たちは一箇所に集まり、そして、最初に見たバシリスクと同じ大きさになった。
「バシリスクは小さな蛇の集まりだったみたいね」
言わなくても分かってるよ。俺の気分をこれ以上落ち込ませるな。
とまあ、俺はどこぞの戦隊ヒーローモノの優しい怪人じゃないので、変身中でも合体中でも容赦無く攻撃するんだけどね。左手のX−7でVAB弾を5〜6発放つ。
片手で撃ったから命中率なんてカスみたいなものだが、3メートルぐらいのあの巨体だったら流石に数発は命中する。まあ、ダメージは皆無みたいだけど。
「………………まあ」
「ドンマイ」
アーティの慰めが余計に心を蝕んでいく。やべえ、勝てる気がしねえ。
今度はX−7とUSPで3発づつ放つが、バシリスクは命中しても全く怯みもしない。
「………………うん」
「頑張れ〜」
合体が終わったバシリスクは、何もせずに俺たちを見ている。
まるで何時でも殺せると言わんばかりに。まさに狩人だ。
X−7を肩に掛け、ポケットから手榴弾を取り出し、ピンを引き抜いて放り投げる。数秒の後、爆発した黒煙の中から、頭が無くなったバシリスクが堂々と登場した。無くなった頭は再び生えてくる辺り、流石化け物だ。
「アーティ……」
「なに?」
俺は視線をバシリスクに向けたまま、疑問符を浮かべるアーティに言ってやった。
「後…………頼んだ!」
「ちょ待てぃ」
全速力で逃走したつもりだったのだが、何故か伸びたアーティの手に捕らえられてしまう。
「無理だって……!!」
「うん、もう打つ手が無いって様相は伝わってきたわ」
あんなもん無理でしょ!?勝てる訳ねえって!!
だってもう、まったく攻撃してこねえんだぜ!?何時でも食えるって言ってるようなものじゃねえか!!それが不気味で不気味で!!
「ミュータントの時はX−7でも少し怯んだから戦う気が起きたけど、コイツは怯みもしねえわ再生するわで……!!」
最早折れ掛けた心が、めっちゃ帰りたいって言ってる。
「しっかりなさい。姿形に惑わされないで」
とは言うがなぁ。まあ、やるけども。アーティのおかげで少し戦う気が出てきた。
少しばかりボケが入ったショートコントを終わらせた俺は、USPをレッグホルスターに戻す。
「そろそろ真面目にやりますか」
いい加減動き出しそうなバシリスクさんの為に、戦闘準備を終わらせる。
何故、今食わないのかは激しく分からないが、優しさだと勝手に解釈しておこう。
コイツは素早いからな。気をつけないと。どこぞの身体をバラバラにされても復活する魔装少女?とか、15分に6回までなら死んでもOKな犠者じゃないから、俺は1回死ねばそれで終わりだ。
視界にYou Are Deadとか、ゲームオーバーとか出ない。ただの真っ暗な死だけだ。
「来いよ。俺の悪運から来る強運、見せてやるぜ!」
それは遠回しに、バシリスクには運無しじゃ勝てないと言っているのにも同義だと言う事を、この時の俺は知らなかった。
バシリスクは、待ってましたとばかりに突撃してくる。それを危なっかしく右に回避した。
「いきなりかよ。動かなければ良かったのに」
両手構えのX−7で5発連射すると、それ以上何も出なくなった。弾切れだ。
「マジかよ……!」
使い切ったバナナ型弾倉を捨て、弾薬ポーチから新しい弾倉を装填する。自動装填なので、後は余計な事をしなくても弾倉から薬室に自動的に装弾される。便利だね。
モードを連から単、Sに切り替え、3発バシリスクに命中させた。――――と、
「怯んでいる?」
何故かバシリスクが少し怯んだ。今まで全く怯まなかった奴が、何故か。
そこで俺は突然、アーティの言葉を思い出した。
――――姿形に惑わされないで――――
もしかしたら奴には弱点があるのかもしれない。それも体内の中に。
SMモードだと、貫通力が足りなくてそこには届かなかったんじゃないだろうか?Sモードにして、貫通力が少し向上した事により、ようやく届いた。でもそれは致命傷を与えるほどじゃなくて、怯むに止まった。
「弱点があるなら話は別だ」
ようやく見つけた光明、手放すわけには行かない。しかし、
「おいおい……!」
弱点を攻撃されて怒ったのか、バシリスクは今までとは段違いのスピードで突撃をしてきた。今まで何とか避けていた俺なんかにそれが避けられるわけ無く、一瞬の内にバシリスクに食われてしまった。
死んだと思った。だが、俺は閉じた目蓋を開けると、何故か生きている事に気付く。
「どういう事だ?」
しかし、その場所はさっきまで居た場所じゃなかった。
妙に息苦しい。しかもなんか狭い。めっちゃ真っ暗。
そこで俺は1つの結論を見出した。…………ほとんど勘で。
「ああ!バシリスクの腹の中だ!」
途轍もなく、しっくりきてしまった。俺はバシリスクに丸呑みされてしまったという事に。
「やべえ、どうしよう?」
まったく身動きが取れない。しかもX−7を持っていない。
食われた時に落としてしまったのだろうか?最悪である。
そんな動けない中、ふと前方に何かが居る。それはとても気持ちが悪い、人のような……。
「こいつ、ゾンビじゃね?」
間違いない。ゾンビだ。
更に言うなら、動いている。こいつ死んでねえぞ!!
「やばい!噛まれる噛まれる!!」
俺は動けないのに、何故か突然現れたゾンビは動いている。
というより、俺の動きを阻む黒い塊が、ゾンビの所だけ道を開ける様に無くなっていく。
もしや、と思った。俺の予想が正しいなら、このゾンビはバシリスクの本体だ。
バシリスクは蛇が本体なんじゃないんだ。その中に居る、このゾンビが本体なんだ。ゾンビを中心に、小さな蛇が集まってバシリスクが出来る。つまり、こいつを倒せばバシリスクは消える。
まあ、予想でしかないわけで。事実かどうかは不明なんだけどね。
「って、そんなこと言っている場合じゃねえぇ!!」
気付けば、ゾンビが直ぐそこまで迫っている。俺、噛まれるぅぅぅぅぅ!!
『しょうがないわね』
そんな声が響いた瞬間、俺の動きを阻んでいた黒い塊が消えた。ていうか、俺の体が宙に浮いた。
「荒っぽいな」
どうやら、バシリスクの腹の中から出れたようだ。ただ、
「たぁっ!!?」
受身を取れずに背中から地面に落ちてしまう。背中を強打した……!
「だらしないわよ」
アーティが助けてくれたみたいだ。見ればバシリスクの頭が無い。
「手刀でバッサリと」
「お前は本当に人間か?」
化け物の首を手刀で切り取る人間って、本当に地球人か?Z戦士とかじゃなくて?
アーティってスーパー○イヤ人とかにならねえよな?
「さあ?どうかしら?」
地味に怖い事を言ってくれる。ただ今回は、そのおかげで助けられたからな。ありがとう。
「どういたしまして」
こういう時、言葉に出さなくても済むから読心も悪くない。
「そろそろ立ち上がったら?2度は助けないわよ?」
「おおっと!」
アーティの言葉の通り、バシリスクは頭の再生を終える所だった。
俺は立ち上がり、腰から短刀を抜く。ポケットから最後の手榴弾を取り出し、ピンを引き抜いた。
「さあて、終幕の時間だ!」
手榴弾を放って、安全圏までとりまダッシュ。爆発と共に、バシリスクの頭が無くなった。
俺はこれまた全速力でバシリスクの下まで行くと、再生途中のバシリスクの首から胴体まで、短刀で一直線に切り裂いた。
「出てらっしゃいな奥さん!!」
胴体の切り口を押し開くように、ほとんど力技でバシリスクの胴体を開かせる。
その奥に居たのは、さっき見たバシリスクの本体だ。
それを見つけた俺は、閉じかかる切り口を短刀を横にして抑え、弾薬ポーチのガンホルダーからS&W M37を取り出し、本体の脳天に押し当てる。
「どんな装甲だろうと、ただ打ち貫くのみ!」
このセリフが分かった人、あなたは同士だ。今度ス○ロボ談義でもしよう。
リボルバー故に少ない装弾数を余す事無く全て使い切り、5発全てを撃ち切った時、そこには頭が穴だらけのゾンビが動かなくなっていた。そして、バシリスクを構成していた黒い蛇たちはもがき苦しむように消えてなくなり、最後には本体であったゾンビがその場に倒れているだけになった。
俺は、バシリスクに、勝ったのだ。
「勝っ…………た!」
「ご苦労様」
これまた後ろにピッタリ張り付くアーティは、嬉しそうに笑っていた。
いかがでしたでしょうか?
僕はスパロボを全作やってはいないんですが、とても大好きです。
「どんな装甲だろうと、ただ打ち貫くのみ!」
とは、スパロボの主人公の一人のセリフです。
かっこいいですよね!名セリフです!
バシリスクを撃破した主人公!彼は頑張りすぎでは無いだろうか?
御意見御感想お待ちしています!




