表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/68

第37話 不憫な子たち(途中で変なの居た)

お楽しみください

 扉を開けた先には薄暗い通路が奥まで続いており、薄暗いのも相まって一番奥が見えなかった。

 両サイドの壁には扉と横長のガラスが等間隔で並んで、映画とかで見る研究所の廊下まんまだ。


 俺たちは纏まって目的のサンプルを集めるのは時間が掛かると判断し、ランドさんの提案で2つにチームを分けることになった。


 俺はアーティとセットで、一般人と言う事もあって湊とマーシャさんが付いてきてくれるそうだ。ランドさんとクルスさんは2人だけ。危険じゃないか?と言ったが、湊は俺と歳が近い事で決定。それで3:3に分けると、俺たちの方が危険度が高い。ならもう1人追加したいが、ランドさんかクルスさんを回すと今度は向こうが危険になる。一番強いのはランドさんとクルスさんだからだ。


 ならば必然、一番強い2人で組ませて、俺と女性組で組ませれば一番安全という事になった。


 これには俺も最良と判断し、それで同意して見せた。

 そして今は二手に別れ、俺、アーティ、湊、マーシャさんは近くの扉の中でサンプルを探している。


「サンプルってどんな物なんだ?」


 そういえばと、研究室の机を探りながら問いかける。

 そもそも俺はそのサンプルとやらは知らない。どんな形状かも聞いてなかった。

 だから思い出した俺は作業をしながら、隣の湊に声を掛けた。


「何でも“人型”らしいよ」


 湊も同様、作業をしながら、簡潔にそれだけ述べた。

 人型ということは生き物?しかも人型って…………人体実験でもしてたのか?

 ふとした疑問を言葉に出すと、回答主の湊は表情一つ変えずに、


「そうだよ」


 と言った。軽っ!?でも、だからこんな地下に作る必要があったのか。

 ――――人体実験は禁忌、バレたらどうなるか分かったもんじゃねえからな。

 というか人体実験を案外すんなり受け入れてる俺って……。まあ、人体実験なんて表立ってないだけで意外とやってるものだからな。国でやっている国家もあれば、一組織としてやっている団体もある。一般人が知らな過ぎなんだよ。

 ちなみに俺は早織からその事を聞いたから威張れないんだけどね。


「サンプルとやらが人だとして、なんで湊は机を探しているんだ?」

「………………ぁ」


 俺がそう聞いた途端、湊は作業中だった手を止め、数秒間を開けてから小さく呟いた。

 うん、今「ぁ」って言ったぞ。意外とこの子天然だ。

 湊は見る見る顔を真っ赤にさせ、耳まで赤くなってしまった。


「…………ドンマイ」

「……良いんだ。いつもの事だから」


 俺は大層に同情の視線を湊に向け、手を肩に置いた。

 どうやら湊は、昨日マーシャさんから聞いた通り、戦闘以外はまるで駄目に当てはまる様だ。

 なんだか湊がとても不憫(ふびん)に思えてきた。あれ?目の端に温かいものが……。


「向こう、探してくる……」


 湊はそう言って、逃げる様に走って行った。頑張るんだぞ〜。

 何故か娘を見守るお父さん的視点で、走って行った湊を見る俺が居た。俺、年下なのに。


「不憫な子」

「アーティ。それはもう言った」


 気付けば、俺の真後ろに張り付くアーティが居た。アーティ、頼むから気配無く後ろを取らないでくれ。


「マーシャさんは?」


 後ろに振り返ってアーティを見た。やはりお世辞にも綺麗とは言えない布を体に巻きつけた、見た目小学生の長白髪・白肌のアーティ。彼女は俺の問い掛けに、小学生とは思えないほどの大人な笑みを浮かべ返答する。


「あの子が向かって行った方向に居るわ」


 何故か俺以外の人の名前を呼ばないアーティは端的にそう述べた。

 アーティは俺以外の人の名前を呼ばない。大抵、「あの子」「あの人」「黒人」「白人」という。理由を聞いてみたが、覚えられないとの事。じゃあ何で俺の名前…………俺がそれを聞く前に、「貴方が知らなくて良い事よ」と言われた。


 ふと考えてみると、最初からアーティは不思議な事だらけだ。


 俺の名前を知っていたり、ゾンビの垣根を踊る様に抜けて行ったり、変な風に知識はあるわ、現実離れしたその存在感とか。それにあの表情、そうそう出せる笑みじゃない。波乱万丈の人生を歩んだアラフォーがようやく出せるレベルだぞ?

 名前も偽名だろうし、日本人じゃなさそうだし。思い返せば、アーティについて俺が知っている事は何も無い。


「アーティ……」

「貴方が知らなくて良い事よ」


 何時もこんな感じだ。俺に恨みでもあるんだろうか?

 これは俺の予感でしかないが、ひょっとしたらアーティはこのゾンビ発生事件の核心に居るんじゃないだろうか?犯人とは思えないが、何かしらの形で関わってるんじゃないか?

 彼女は何かを知っている。でもそれは、時が来ないと質問すらさせて貰えない。

 そんなキーパーソンの彼女が俺の事を知っている。これは香澄さんが言った通り、俺が鍵を握っているからか?


 俺が選択した全てが、真実を解明させる為に動かされているのなら、この研究所にも何かしらの鍵が眠っているはずだ。


 多分俺は、そんな感覚で研究所に入ったんだと思う。良く分からないけどな。

 ………………いつの間にか話が二転三転してないか?


「はあ、まあいいや。アーティ行くぞ〜」

「しょうがないわね」


 俺はアーティを伴って湊たちと合流した。





 所変わって商店街。


「なんなんだ、ったく……」


 商店街を疾走する彼の名前は、溝端常正(みぞばたつねまさ)

 ――――――冴えないフリーターだ。


 これは彼が犯した罪と、その後の彼の行動を記した物語である。


 …………あ、間違えた。これ別の話だ。今、これ関係無いんだよな……。

 えーっとスケジュールではここには…………ああ、冬紀ハーレ(ゴホンゴホン!)……じゃなくて、冬紀達の話が入るわけか。んじゃ、早速……


「えっ!?俺の出番もう終わり!!?」


 今度別で作ってやるから我慢してろなう。


「絶対使い方間違ってるだろ!!しかもツ○ッター風に言ってんじゃねえ!!」


 それじゃバイならー。


「おい!待てって!おい!!」


 ちなみに、今度とは言ったけど半世紀後かもしれん。


「おいいぃぃぃぃぃ!!」





 (今度こそ)所変わって住宅街。

 そこの道路を走る1台の軍用車両があった。灰色塗装のハンヴィー、冬紀達である。


「何故か途轍(とてつ)もない遠回りをした様な……」


 後部座席にちょこんと座る茶短髪の藤崎が、苦笑気味の表情で口からそんな事を洩らした。

 彼女も今では馴染みまくっている。馴染みすぎて存在感が薄くなってすらいる。

 はっきり言ってこの集団の中で藤崎は普通過ぎたのだ。そりゃ目立たなくなるわ。この集団、一人一人のキャラがめっちゃ濃いもん。


「そうか?気のせいだろ?藤崎」


 天井ハッチから身を乗り出して付近の警戒をしていた理奈が、車内に戻ってそう言った。

 その理奈に同意する様に、隣に座った(まどか)が頷く。


「そうですよ藤崎さん。道は間違えていませんし」

「いえ、そういう事では……」


 しかし藤崎は訂正しようとして…………止めた。この数日で円の面倒臭さを思い知ったからである。


「早織ちゃんがナビしてくれるから大丈夫よ〜。藤崎ちゃん」


 運転中ながら、美鈴がのほほんと余裕で会話に参加してきた。

 ――――最初の頃とは雲泥の差である。


「何か気になる事でもあるのかい?藤崎さん」

「何でも無いです……」


 天井上で理奈と同様、付近を警戒していた冬紀も、会話に参加した。

 ちなみにこの時点で誰一人として藤崎の下の名前を呼んでいない。早織は初っ端で呼んだ美鈴すらだ。


 本当は良祐と逸れた後、一度自己紹介をしたのだが、何分影が薄すぎて直ぐに忘れられてしまったのだ。


 サクラが唯一、藤崎のフルネームを覚えているが、何故か語ろうとしない。

 それを聞こうとした理奈に迫られた際、「あぁ持病のフォックスダイがっ!」とまるで生○会の一存の病弱妹みたく逃げてしまうのだ。藤崎はもう諦めたとかなんとか。


「大丈夫?気分でも悪いの?藤崎さん」

「大丈夫です……」


 親友であるはずのサクラにすら苗字で呼ばれる藤崎。

 どうやらここにも不憫(ふびん)な子が居たようだ。あれ?目の端に温かいものが……。

いかがでしたでしょうか?

なんだかとても変な回!次回からは多分普通?

御意見御感想をお待ちしています!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ