第10話 法律に免許は必要だが運転に免許は必要ない
おはにちは!らいなぁです!
僕は学生ですので学校に行くんですが、最近体がだるくて家の外に出たくなくなるんですよ。
でも行かなきゃ単位取れないし・・・。
しょうがないから行くんですけどね。
僕としては将来の夢がニートなんで一日中家にいたいですけど。
そんなこと言っちゃ駄目ですよね。頑張ります。
紹介はありません。紹介するキャラいないんですけどね。
今回はギャグ回かもしれませんね。
「あ〜無理。体が動かない〜」
俺たちの足である車の後部座席一番後ろのシートに横たわっている俺が唸る。
すると前のシートの右側に座る冬紀がしょうがないさと言った。
「10分くらい走り続けて、ハーメルンの衝撃波を受けたんだから」
冬紀の言葉を証明するように、俺の体はピクリとも動かない。唯一、頭だけが動かせる状態だった。
「あの後大変だったんだぞ?」
前のシート左側に座っている理奈がまったくよ〜と顔をしかめる。
結局あの後、理奈に許してもらうことは出来たが、直後に気絶するという事態に直面した(らしい)。体を酷使しすぎたんだね♪
そして冬紀(だっけ?)が俺の体を担いで、今いるこの一番後ろのシートに寝かせた(らしい)。
暫くして眼が覚めた俺は、事の顛末をみんなに説明し現在に至る。
「は〜ありがたや、ありがたや〜」
「放り出してやろうか?」
「すいませんでした」
開口一番のボケが理奈によって冷たくあしらわれる。ひどいな〜。
ちなみに現在、俺たちは早織ん家に向かう前に、一番近くのガソリンスタンドでフリードに飯を食わせていた。外には姉貴と早織が見える。
理奈と冬紀は体力温存のためにフリード内で待機。早織は姉貴が燃料補給している間の見張り役だ。
そんで円さんはというと・・・
「はい良祐さん。あ〜ん」
「結構です!」
俺の頭の下に座っている。つまりは俺を膝枕していた。
あれ?なんでこうなったんだっけ?確か・・・
姉貴が世話係がどうの言い出して・・・
お姉さんがやる〜って姉貴が言って・・・
みんなが運転しろって言った時に・・・
円さんがじゃあ私がやります〜とか言い出したんだよな。
うん。思い出した。姉貴のせいだ。間違いない。
俺は膝枕を回避しようとするが、頭しか動かせずに断念する。
「懲りない子ですね〜。早く体を完治させるために動かないで下さいって言ったじゃないですか?」
円さんに、唯一動く頭すらガシッと鷲づかみにされ、いよいよ動かせるのが目線だけになったぞ。
「円さん?顔が怖いですよ?あいたっ!強く掴まないで!割れる割れるぅ〜!駄目!駄目!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「変な声出すなよ気持ち悪い」
理奈が早織張りの冷静なツッコミを入れるの最後に、俺の視界はブラックアウトした
ああ〜やばい。体が重てえ〜。まるで何かが乗っかってるみてえだ。マジ死ぬ。やばすぎる。横綱でも上に乗ってんのか?
俺はうなりながらゆっくりと目蓋を開いた。
「眼が覚めたのか?体は大丈夫か良祐?」
視界に冬紀が映る。やつの体は俺のほうに向かって置かれており、下半身と思しき場所が視界の左側に消えて・・・は?
俺は背筋が凍るのを感じる。何故ならそれは紛う方ない膝枕だったからだ。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!何で冬紀が膝枕してんだ!?冬紀はアレか!?ボーイズ○ブ系の人だったのか!!?」
「人聞きの悪いこと言うなよ!!僕はいたって普通だ!!」
怒鳴る冬紀をガン無視して俺は体を起こそうとする。しかし・・・
「おもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉいぃぃ!!」
そういや重たいからって眼を覚ましたんだよな。俺は視線だけを自分の体に向ける。
「アタシはそんなに重くなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぃい!!」
見ると理奈が俺の上に座ってやがった。理奈は大絶叫すると思いっきり体重を掛ける。
「重い!重い!重すぎる!!何だお前ら!怪我人を甚振って何が楽しい!!」
「僕までその括りなのか!?」
なんか冬紀が言っていたがそれどころではない!重すぎる!!
俺の体がミシミシと嫌な音をたて始めた(多分)。
理奈は理奈でアタシは重くない!訂正しろ!とか言ってやがるが、自分で体重掛けといて何言ってやがる!
「訂正してやるから、まずどけろぉぉぉぉ!怪我人は労われっ!!」
二眠りしたおかげで少し体が動くようになったが、上に理奈が乗っているせいで実質足ぐらいしか動けない。
足をバタバタさせるも効果は皆無で、理奈は今すぐ訂正しろ!とかぬかしやがる!
ここは素直に訂正しとくのが正解か。俺は直感し、即行で口を開いた。
「訂正します。理奈は重くありません」(棒読み)
「棒読みだから却下」(早口)
てえぇぇぇぇぇぇぇぇめえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
訂正しただろうが!棒読みは駄目だなんて聞いてねえぞ!!
俺は心の中で大絶叫し、ひたすら理奈への不満を(心の中で)吐露すると、冷静になって今度こそと意気込む。
「全然重たくないさ。理奈は天使の羽のように軽いよ」
「じゃあ問題ないな。ていうか口調キモいぞ」
理いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ奈あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
この○○○○女があぁぁぁぁぁぁ!!この○○○!!お前なんか○○○で○○○○で○○○○○○だあぁぁぁぁぁ!!
放送禁止用語を惜しげもなく(心の中で)大量投与する俺は、怒りから現在枕になっている膝に後頭部で頭突きをかましまくる。
痛い痛い!良祐やめろぉ!!と馬鹿な冬紀が叫びまくるが、完全に無視。今はBL小僧に興味は無いのだ!
俺は八つ当たりをしまくり、何とか落ち着いた頭で冷静に考える。
理奈に何を言っても無駄だろう。ならば頭を使えばいいだけのこと。
俺は視界に映る理奈が、“俺の上”に乗っている事を確認すると、二カッと笑って口を開く。
「理奈、どうでも良いけどこれはマズイ」
どうでも良くねえよ!と理奈は反論するが、もちガン無視。
出来るだけ真剣な表情で、俺は目線で理奈を誘導しながら言い放つ。
「位置関係が絶妙だ」
「「?」」
俺の目線は理奈が座っている辺りを指し示し、俺の体のどこに理奈が座っているかを彼女自身に確認させた。
つられた冬紀も視線を向けて、二人は気づいたようだ。
理奈は、俺の・・・・(言ったら負けだ)の辺りに(あくまで辺りに!)座っていたのだ!
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
「一本取られたね理奈(笑)」
おっ!理奈のことだからぎゃあぁぁぁぁぁって言うのかと思ったけど、意外と可愛らしい悲鳴じゃないか。
冬紀にいたっては大爆笑してるぜ。はっはっはっ。それ見たことか!
しかし俺は一つ計算間違いをしていた。それは理奈が暴力的だということ。
「死ね!馬鹿!!」
「あたぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
理奈は腕を振り上げ、俺の顔面真ん中に思いっきり振り下ろした!顔が割れるぅぅぅぅぅぅ!!
「んで?他のみんなは?」
助手席に座った俺が不機嫌で聞くと、後部座席一列目に座る理奈と冬紀は申し訳無さそうに理由を語る。
「偵察に出ているよ。ここは早織さんの家の近くなんだ」
「護衛には姉さんがついて行っている」
「円さんか。なら問題ないな」
俺は一転して頷く。なるほど、円さんならゾンビなんかに遅れは取らないだろう。
ちなみに理奈は円さんのことを姉さんと呼んでいる。多分、円さんが強いからじゃねえか?
ん?ていうか・・・
「お前らは何で行かなかったんだ?」
二人を代表して冬紀が簡潔に述べる。
「君と・・・先生の護衛」
冬紀は俺を指差した後、運転席で眠っていた姉貴を指差した。
いたのか・・・。気づかなかった。
・・・助手席にいるのに。まあ寝てるしな。存在感なさ過ぎなんだよ。
そうか、寝ていて動けない俺と姉貴を守るのには、そこそこ実力のある二人が最適だったわけだ。
撃退より防衛の方が難しいからな。
しかしなんで姉貴起きねえんだ?あれだけ大声出してたのに?
あーなるほど。よくよく考えれば寝ているのにも無理はない、朝からずっと運転尽くめだったからな。・・・・ありがとう姉貴。
心でそう呟くと、俺は制服の上着を姉貴に掛けてやる。お疲れさん。
「ところでハーメルン撃退からどのくらい経ったんだ?」
「一時間ってとこだろ?変なことしてなけりゃもうちょっと速く着いていたかもな」
そうか・・・そういやそうなんだよな。
俺があの時徒歩を選択せずにフリードで行けば、もう少し早く早織ん家に着けたんだよな。
あれは完全に俺のミスだ。ここにはただのゾンビしかいないと思って、油断していたんだ。
俺の常識で選択してしまった。常識は捨てなければならないのに。この世界に常識で挑めばほぼ必ず死ぬ。俺のは運が良かっただけだ。
あの時はみんなが生き残ったが次は無いかもしれない。もっと視野を広く持たなければ。リーダーとして。
「次は間違えない」
「「えっ?」」
唐突な俺の言葉に、二人は困惑の様相を見せる。
「何でもない。生き残るぞ、絶対」
これまた唐突な発言だったはずなのだが、二人は全く意に介さず言い放った。
「「当然!」」
いい答えだ。俄然やる気が出てきた。
俺は暇を持て余したし、次の目的地でも選んどきますか。
鼻歌交じりに地図を取り出した。二人も参加して、三人で思考を巡らす。
「警察署は?」
「当てにならないだろう。銃声が聞こえないし、とっくのとうに逃げたか全滅だろ」
警察署にはゾンビ発生の初期にゾンビが向かってった場所だろう。ゾンビを見た人は大体、守ってもらおうと警察署とかに行くからな。
んで、昨日のうちに署員は全滅したか、あるいは逃げたか。どちらにしろ警察のシステムは崩壊、何の役にもたたねえ。
そして何より、ゾンビが出たら警察署は壊滅するのがお決まりってな。・・・・ゲームとかの話だ。
「なあなあ良。ショッピングモールとかは?」
「立て篭もる気か?それにまだ遠い。車で3〜4区を越えなきゃなんねえんだぞ?」
車を使って5〜6時間。とてもじゃねえが次の目的地にはむかねえ。
それに行った所で、救助が来る見込みもねえ状態でどのくらい待てと?武器はともかくとしても、食料が尽きたらおしまいだ。
それだったら多少無理してでも東海林市を脱出した方が、まだ希望がある。
だが・・・・
ゾンビにハーメルン。食うゾンビに呼ぶゾンビがいたんだ、もしかしたらさらに厄介な奴が出るかもしれない。
これで選択をまた間違えたら・・・。
俺は1人で唸る。それを見ていた冬紀と理奈は・・・
「1人で抱え込むなよ良祐」
「仲間なんだから頼ってくれてもいいんだぞ!」
「お前ら・・・・馬鹿めっ!」
突然罵倒された二人は、はあ?といった表情で俺を見ている。
そして俺は・・・・
「だが、あんがとよ」
まったく、今日はよく人に助けられる日だ。・・・・・だが、悪くはねえな。
二人はニヤニヤニヤニヤ気持ち悪い笑顔を浮かべ出した。うわっ!気持わるっ!
「良祐から感謝されるなんて・・・」
「明日は核弾頭でも降って来るんじゃないか?」
2秒で後悔した。言わなきゃ良かったぜ。
俺が感謝したことを激しく後悔していると、俺のケータイが突然震えだす。
「なんだ?」
右ポケットからケータイを取り出すと、液晶には早織と書かれていた。
ちなみに俺たち六人はそれぞれのケータイ番号を交換している。何かあった時に素早くやり取りできる様にだ。
俺は通話ボタンを押して耳に当てた。
「ハロー!ジュディ」
『複雑骨折しろ!』
「ひでぇ!?」
電話口の向こうから早織の悪態が聞こえる。第一声がこれかよ。
俺はどう言い返してやろうかと思っていると、ふと早織の不自然な様子に気づく。
「早織お前、走っているのか?」
そう問いかけると早織はそうよ!と返答する。声大きいよ、落ち着け。だが、どうやら異常事態のようだな。
ボケを一旦封印し、冷静に事情を聞きだそうとする。
「んで、何があった?」
『私の家の近くまで着いたんだけど、玄関の前に2〜300を超えるゾンビが・・・!』
わおっ!なんちゅうこった!一筋縄じゃいかないやないの!
「追われているのか?」
『ええ!今、前原さんと東に逃げているわ!』
「東か!」
俺は地図を読み取り、早織の家から東方面を見る。
俺たちが今いるのがここで、早織がいるところは多分ここ。あまり遠くは無いが、フリードでも数分は掛かるな!
もし早織たちが東に逃げ続けたら、着く場所は・・・・・河川敷か!そこなら最短で行ける!
「何とか逃げ切って河川敷まで行け!俺たちもそこに向かう!」
『わ、わかったわ!』
俺は通話終了ボタンを乱暴に叩き、ケータイをポケットに放り込む。
「起きろ姉貴!起きろ〜!」
「むにゃむにゃ。良ちゃんそんな乱暴にしないで〜壊れちゃう〜」
こんのくそ姉貴め!起きやしねえじゃねえか!ていうか何の夢見てやがるこのやろう!
「どうした良祐!?何があった?」
冬紀があわてた様子で事態の説明を求めてくる。俺は二人に言いつつ助手席の扉を開けた。
「早織たちがゾンビに追われているらしい!これから河川敷に向かって二人を回収する!」
扉を閉めて運転席側に回り、運転席の扉を開けて姉貴をお姫様だっこで運び出す。
重い・・・・。
二人に手伝わせ、後部座席に姉貴を寝かせた。
「フリードで向かうのか?誰が運転すんだよ?」
理奈の疑問に、俺は運転席に座って扉を閉めつつ答えた。
「俺だけど?」
「「えっ?」」
理奈と冬紀の大絶叫が聞こえた気がした。
運転なら姉貴のやつを見た!大丈夫だ!問題ない!・・・・・これ死亡フラグじゃなかったっけ?
俺はキーを回し、フリードに息を吹かせる。諸機器の異常がないことを確認しつつ、ギア、アクセル、ブレーキ、ハンドル等々の正常を確認して、満面の笑みで二人に言った。
「ナビゲートよろ(笑)」
声にならない悲鳴を上げて、二人はこの世の終わりみたいな表情で悶絶しかけてた。
いかがでしたでしょうか?
やっぱり良祐の視点ですから結果的に出番が多くなってしまいました。
どうやって良祐以外の出番を出すか・・・・それが問題なんですよね。
足りない頭で一生懸命考えている作者です。
早織と円がピンチ!まさかまさかの主人公が運転?
それでは次回会いましょう!御意見御感想をお待ちしています!
オリジナルの件は未だに募集してます。
有り無しはもちろんの事、銃火器のアイデアもOKです。
読者様一人一人のために全力な作者でした。