第1話 世界が終わる日……の前の日!
おはにちは!らいなぁです!
今作は僕がハマリにハマったゾンビものです!通算3作目!
文章の起伏が激しいかもしれませんがストーリーに変化は無いはずです。今回の1話目は普通の日常回!
ギャグありシリアスありのサバイバルホラーという初挑戦のジャンルなんですが、気合で頑張ってみます!
これからも記憶の片隅にらいなぁと言う名前を覚えていただければ幸いです!
それでは1話目をどうぞ!
俺はある日現実を知った。
何でも出来ると思っていた。何でも手に入ると思っていた。全力で頑張れば全てが出来るし全てが手に入ると思っていた。だが、その幻想は脆くも崩れ去った。
まるで某上条さんの幻○殺し(イマ○ンブレイカー)を食らったかのように。
俺は前原良祐。
何も出来ない、何も手に入れることの出来ない、誰も救うことの出来ないただの高校生だ。
『夢も希望も絶望すらない現実』
ある朝の日。俺は目を覚ました。眠たい眼をこすりながら体を起こし、顔を洗うためベッドから下りる。フラフラとした足取りで部屋の出入り口まで行く。ドアノブに手を掛け、引き戸の扉を開けた瞬間、何か途轍も無く嫌な予感がした。
「おっはよ〜♪」
「へぐしっ!?」
予感的中。扉を開けて待っていたのは、下から来る女性の頭突きだった。何の警戒もしてなかった俺は当然の如く食らってしまう。顎にクリーンヒット。視界がブラックアウトしそうだったが何とか耐え、完全に目が覚めた眼光で女性を睨む。正しくいつも通りの朝だった。
「何すんだよっ!馬鹿か!?」
「馬鹿とは酷いわねぇ〜。良ちゃんの大好きなお姉さんがこうして毎朝スキンシップに来てあげてるのに」
「誰が大好きかっ!!?」
「えっ?大好きだ?」
「耳鼻科行って来い!!」
栗色の髪を伸ばすだけ伸ばして纏めもしていない彼女は俺の姉貴だ。姉貴はピンク色のTシャツを着ているが下は下着しか着けていない。だからまあ……その…………ピンク色の逆三角形が見えている。俺は慣れたけどな。
姉貴は悪気も何も無い表情で俺を見ていた。その表情が俺のイライラを掻き立てまくっている。
そう、これが前原一家――――というより俺の日常だ。とてつもなく不毛なこの会話を毎朝毎朝するのがだ。少しの楽しみと大半のムカつきが俺の思考を占領する中、姉貴のすました表情が俺の怒りを助長させる。 故に悪態の一つもつきたくなるものだ。例えばそれが相手の傷を抉っても。
ったく、俺と遊んでいる暇があったら彼氏んとこでも行ってろ。俺がそう言おうとした瞬間、
「ったく、俺と……ふがっ!?」
素早い素早すぎる!こんな動き見たこと無い!!ぐらいの速さで姉貴は俺の口を塞ぐ。
「良ちゃん?それは言っちゃ駄・目♪……分かった?」
「(コクコクコクコクコクコク!!)」
俺は首が千切れるんじゃないかというほど勢い良く首を縦に振る。だってやべぇよ?姉貴の顔めっさ怖えよ?アニメとか漫画じゃないのに顔の半分が真っ暗で見えないぜ?
下手なこと言ったら食い殺される!ここは頷いとくのが懸命だ。
「よろしい♪」
良好な俺の態度に、姉貴はそう言って開放してくれた。なんていう奴だ!前原さん家の姉貴は化け物か!!?(赤い彗星かっ!!)
…………一人でボケて一人でつっこんでしまった。ちょっと恥ずかしかったりする。
しかし、何故姉貴は俺のモノローグが分かったんだろう?俺がそう聞く前に、
「お姉さんは良ちゃんのことなら何でも分かるのだ!」
「………………」
……だそうだ。底知れず恐ろしい奴だ。
俺は極力覚られないようなことを考えつつ、一階の洗面所に行こうとする。しかしまたしても、
「よ〜し!それじゃ、良ちゃんの箪笥の中にある服の下の本みたいなことしようよ〜♪」
「何故それをっ!!」
「言ったでしょ〜?良ちゃんのことなら何でも分かるのだ!」
高速で振り返り目を見開く。
まさかまさかまさかまさかまさかっ!アレがばれただと!?いやまてまてまて。嘘だ。当てずっぽうに違いない。落ち着け俺。冷静になれ俺。姉貴の手の上で踊ってたまるかっ!それにあれには服を捲っただけじゃ分からない仕掛けが……
「凄いね!あれって上げ底ってやつ?服の下に板敷いてその下に隠すなんて!!」
ばぁぁぁれぇぇぇェとぉぉぉぉるぅぅぅぅっ!!
完っっっ璧にバレとる!!アレの隠し場所バレとる!!バカなっっ!!
「ほんとだよ〜」
追い討ちかけられたぁ!!?
「合計12冊。頑張って集めたね♪」
本数までバレとるっ!アレが見つかってしまったぁぁぁぁぁぁぁ……。
ん?アレって何かって?決まっているだろう!分からないのか?「アレ」。ああ?分からない?そんなもんっ!!
EROHON
に決まっているだろ!って、俺は何を宣言してるんだ!!?
俺は絶望と恥ずかしさからorz状態になる。
「もう終わりだ……世界の終わりだ……」
「それより良ちゃん。あの本みたいなことしよ〜♪」
「ん?あの本みたいなことって…………!!」
俺は即行で顔を上げ後ずさる。そうしても姉貴はどんどん距離を詰めてくる。
「やめろ……やめるんだ……」
「ぬふふふふ」
「正気に戻るんだ」
「お姉さんは正気だよ〜?」
「嘘だっっっっっっっっ!!」
「ひ○らしネタは駄目だよ〜」
さりげなくツッコミを入れる優しさはあるんだ……。
それよりもお姉さんの顔が怖い。笑っているのに笑ってない。あれは獲物を狩るハンターの眼だ。
俺はついに壁際まで追い込まれてしまった。背中に壁の感触がする。しかし姉貴はなおも歩みを止めない。
「ぬふふふ」
「来るな……来るんじゃない……!」
「い〜ただ〜きま〜す」
「来るなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「え〜い♪」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!おかあぁぁぁさあぁぁぁぁぁぁぁんっっっっ!!」
その後、なんとか事態になるのは防いだが、俺のEROHONの居場所を突き止められた。
俺は掛け替えの無いものを失った。まあ別にアレは俺のじゃないしいいんだけどね。友達から無理やり押し付けられたやつだし。
――1時間後。朝の惨劇を回避した俺は、洗面所にいって顔洗ったり朝食を食ったりした後、少しの休憩をとってから制服に着替え、今は学校の道のりを歩いている。横には上機嫌でスキップしながら歩く、姉貴の姿もあった。ああそうそう。姉貴の名前言ってなかったな。
俺の姉貴――名前は前原美鈴。彼女は俺の右隣をスキップしているが、その姿はとてもスキップには向かない姿をしている。
紺色のスーツを着て、さっきは着けてなかった青色のフレームの眼鏡をつけていた。栗色の髪も後ろで纏めてポニーテールにして、ハイヒールを履き、書類が入るバッグを右肩に掛けている。
この姿で分かった人もいるかもしれないが、俺の姉貴の職業は教師。OLかと思った?
俺が通う東海林市立林名高校の科学教師兼保険医。ほとんど保健室に居るから養護教師じゃないかと思うが、一応科学教師だ。
「スキップすんなよ恥ずかしい」
「え〜」
「え〜じゃないえ〜じゃ」
「じゃあ、お〜」
「何に驚いた!?」
「そ、そりゃ……」
「何故俺の下半身を顔を赤らめて見る!見たことねえだろ!!ていうか見るな!!」
「見たことはあるよ……良ちゃんが寝てるときに」
「何勝手に部屋入ってんだよ!勝手に服を脱がすな!!このド変態がっ!!」
そこまで言うと、姉貴は俯いて肩を震わせてしまった。
やべっ言い過ぎたか?と思ったが、
「…………ぃぃ」
「はっ?」
「いいっ!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ?」
姉貴は唐突に顔を上げると、頬に両手をついて光悦の表情をし始めた。
「血の繋がった弟にド変態と罵られてお姉さん嬉しい!!」(早口)
「………………」
何を言ってるんだこいつは……?俺は軽蔑の視線を送ってみる。
「ああ……良ちゃんが軽蔑と侮蔑とともに冷ややかな視線を送ってくるぅぅぅぅ〜」(早口)
「いや……軽蔑と侮蔑は一緒だろ」
「お姉さん感じちゃう〜」(早口)
「………………」
朝の、ましてや通勤登校時間で人通りも少なくないのに、何言ってんだこいつ?
関わらないでおこう。俺は即座にそう決め、学校に走って行った。
――昼休み。いつも通り姉貴と昼飯を食いに姉貴の居る保健室に行くと、そこには先客がいたようだ。
「冬紀。理奈。来てたのか」
「良祐がそうそうにどっか行ったからね。ここに来るだろうし」
なんか爽やかな雰囲気をかもし出すあいつは、宮下冬紀。
顔はそこそこイケメンで剣道部所属。かなりの腕前と聞いたことがある。冬紀は俺と同じクラスで親友だ。雰囲気的に文武両道のスーパーマンかと思いきや、実は勉強は下の上。剣道を極めるあまり、勉強をし忘れたという天然なところもある。
容姿は黒髪を眼に掛からないところまで伸ばしている。剣道の邪魔にならない程度の長さだ。もみ上げは邪魔との事で極力短い。性格は見た目通り爽やか。
そんな冬紀はニッコリ笑いながら俺を見ている。俺は嘆息しつつ呟く。
「次の授業の手伝いさせられてたんだよ」
「あ、そういやあんた日直だっけ」
「じゃなきゃ手伝いなんかしねーよ」
「ははっ、言えてる」
今話していた少女は、緋達理奈。
俺たちのクラスじゃ結構有名で、顔は良いけど口調がな……と噂されている。部活動には入ってないが、運動神経は抜群に良い。色んな部活から引っ張りだこだそうだ。
理奈も俺と冬紀と同じクラス。勉強は中の中。赤みがかった髪を肩口まで切った髪型に、前髪の右側をわけているペアピンが特徴的だ。性格は若干威圧系。
理奈はこれから飯だってのにカロリーメイト(チョコレート味)をむさぼっている。
「カロリーメイト食って飯食えんのか?」
「馬鹿言うなよ。アタシを誰だと思っているんだ?」
俺は間を空けることなく即答した。
「「緋色の反則王」」
まさかの冬紀とハモった。理奈は赤みがかった髪を逆立て立ち上がる。
「アタシをその名前で呼ぶな!!」
物凄く髪が逆立っている。怒髪天を突くって本当だったんだな。
まあともかく、「緋色の反則王」とは、理奈が体育祭やテストなどなどの事に対し、反則ギリギリか反則で全てが決まることから自然と名づけられた。彼女はこの名前を嫌っているらしい。
理奈は次から次へと抗議の声を上げる。
「反則なんかして・・・・はなくないけど!ちゃんとやろうとしたらそうなっただけだって!!」
「ちゃんとやって反則ギリギリって駄目じゃん」
「言うな良祐。これが彼女のスペックなんだって」
俺、冬紀が問題点を指摘すると、理奈は急に勢いをなくした。
「た、たしかにそうかもしれないけど……!」
「「……けど?」」
しかし、理奈は切り札があると言わんばかりに勢いを取り戻した。
「アタシは女だ!せめて姫と呼んでくれ!!」
――――――瞬間、
「「……………………」」
痛いほどの静寂が場を支配する。その突然の空気に、理奈はおどおどして俯いた。
この後数分間、空気が変わることは無かった。
「……で姉貴は?」
ようやく再始動した俺たちは、さっきの話題を忘れて別の話題に持っていこうとする。俺はこの場に居るであろう人物が居ないことに気づき、二人に所在を聞いてみる。
「ト、トイ……レだっ……て」
「僕もそう聞いてる」
二人は矢継ぎ早に行方を語ってくれた。
理奈は泣きそうな様子で俯いている。さすがに俺と冬紀はバツが悪くなり、明後日の方向を向いていた。
そう理奈の弱点の一つだ。彼女は虐めには強いが、無言の空気など自分では対処できない事態に陥った時、最近の内閣の支持率みたいに涙が簡単に落ちてしまうのだ。
口調があれだから理奈は有る意味残念なのだが、泣いている彼女は最高だ。萌える。俺の支持率もガンガン落ちている気がするが、んなこたぁどうでもいい。
見れば冬紀も同じ考えなのか、萌えながらも葛藤していた。
すると、俺の後ろから扉が開く音がする。あら〜とか言ってるから姉貴が帰ってきたようだ。
「………………!!」
姉貴は泣きかけている理奈を見た瞬間、少女漫画の驚愕した人みたいな顔で固まってしまった。
あ、姉貴?と呼びかけてみると、表情を戻し俺と冬紀に光悦の表情で迫ってくる。
「あなた達……」
「な、なんだよ……?」
「な、なんでしょう……?」
後ろに仰け反りながら俺たち二人は姉貴に聞く。姉貴は頬を真っ赤に染め今日一番の光悦の顔で言った。
「ついに理奈ちゃんを○○したの!!?」
「してねえよ!!」
「してません!!」
「されてません!!」
理奈まで加わって大ハモリ大会だった。
「な〜んだ残念」
「残念じゃねえよ残念じゃ」
事態を説明し終えた俺たちに、姉貴が言った最初の言葉がそれだった。
いかがでしたでしょうか?
次回から物語は急展開を見せます!ゾンビの出現と共に地獄絵図が繰り広げる町で主人公の一団は生き残ることが出来るのか?
次回の前書きにでも主人公たちの紹介でも書きましょうかね。では次回、また会いましょう!