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王姉3

「桜華、桜華ったら聞いているの?」

「あ・・・はい、ティターニア様、えっと・・何でしたっけ?」人の話を聞いていないのは自分もかと少し自嘲しつつ王姉に視線を戻す。少し色々と考えすぎて,途中からまったく話を聞いていなかったのだ。


「もう、桜華ったら、これは貴方と王妃の座を争う候補達のリストなのよ?しっかり覚えておかなくては駄目よ。」


「はあ・・・その候補の方々って何人いるんですか?」


「6人、そして貴方を含めて7人が王妃候補として推薦され後宮に入るわ。」


「・・・。6人も居るのなら私がわざわざ入る必要はないと思うんですが・・。」


「駄目よ!前にも言ったと思うけど、私は弟には本当に幸せになってほしいと願っているの。その為にあの子にとって最善の相手を最高神であられる太陽神トトスに願って貴方が与えられたのですもの。」


桜華はもう何度目になるかわからないため息をついた。この話に至っては何度も同じ延長戦を巡り巡って両方が引く事がない。大体、桜華は結婚する意思など微塵もないし、どうにかして弟と繋がる事ができたら即刻帰る気満々なのだ。

それに、あの弟の事だ、自分が居なくなってから約半年経つが、大人しく手をこまねいているはずは無い。体は弱いとは言え、頭脳と能力は希代の巫女と呼ばれた大祖母様のお墨付きだ。さすがにこんな異世界に姉が召還されたとは思ってはいないかもしれないが、いつになるかは分からないがそう遠くない未来に弟が必ず迎えにくる事を確信していた。となるとここでの滞在はいわばかりそめのお客さん、もしくは少し長めの留学だと思って限られた時間の中でできるだけ、この文化と貴重な考古学の遺産を勉強したいと思うのは桜華にとって自然な流れだったのだが、王姉も一歩も引く事がない。


最終的に提案してきた内容がこういったものだった。

「わかったわ、じゃあ、これから行われる王妃の選定に参加してくれるだけでもいいわ。もしあの子が桜華を選ばなかったら私も諦めるから。それに・・・、本宮にあるアトランティスの祖先の資料は此処の図書室にあるものとは比べ物にはならなくてよ?本当は王家の者以外には知る事ができない貴重なものもいくつかあるんだけど、良かったらそれを見せてあげることもできなくは・・・」


「行きます!参加するだけで良いんですよね?」


「え・・ええ、そうよ。」ティターニアは桜華の思わぬ意気込みに少々あきれつつもうなずいた。桜華とは違った意味でティターニアにもある確信があった。あの子はきっと桜華を選ぶことになるだろうと・・・。しかし、桜華にはまだ伝えていない事柄がいくつかある。この事は・・・桜華が実際に本宮で人から聞かされた事ではなく自分の目で見て、そして弟アクロティヌス本人を知ってほしい、彼を救ってほしい。それは自分の勝手な願い、そしてそれが簡単では無い事は千も承知だ。それでもかけるしか無いのだ・・トトス神が選んだ娘に!


桜華が承諾してから準備は猛スピードで進められた。アトランティスの祖先達が移住してきたこの新しい地には当然アトランティスの民族しか居ない。その中で王族と、王家に連なる貴族がそれぞれの領地をまかされている。ティファーニア自身も王家に縁の深い貴族の元へ去年輿入れしたばかりだ。


アトランティスの王家は古くから絶対的な権力と力の象徴として君臨してきた。つまりその王の妃という立場はこの世界に生まれた女ならば喉から手がでるほど欲しくて仕方のないものなのだ。

他の候補者達はいずれも古くから名のある名家の令嬢ばかりだ。つまり彼らも王家に近い貴族であり、これから行われる選定会は言わばどの家がこれから王妃の身内として権威と力を手に入れるかというある意味戦争の縮図にもなっている有様だ。


今迄歴代の王妃候補達の中には選考中に何らかの原因で死亡したもの、不慮の事故として片付けられたものや、精神的におかしくなった娘などきな臭い逸話が後を絶たない。もちろん出来る限り桜華の周りには護衛をつけ、守るつもりでいるのだが、桜華はあっさりとそれを断った。


「大丈夫ですよ。どうせ私なんて選ばれないし、大人しく壁の花になってますから、きっと誰も私の事なんて気にしません。」

「そんな事ないですよ!桜華様は候補者の誰よりもお綺麗です。きっと王子も桜華様をお選びになります!」とむきになって桜華専用につけた侍女ミルハが憤慨する。


苦笑しつつ、そんなミルハをなだめる桜華を見つつ、ティターニアはいよいよこの時がきたのだと実感していた。


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