過去夢
お待たせ?致しました。アルティマイナ再開します
桜華が熱を出して寝込んでいるとの報告が入ったのは、桜華に過去のディオルカやアンブロシアの話をした翌々日の事だった。すぐに医師を遣わせた後、軽度の風邪だという報告を受けて、意外に食い時の張っている彼女に特別な甘味の物を料理長に作らせ看まいに行く事にし、側近にスケジュールを調整させていると、ジュニュファスが神妙な顔つきで部屋に入って来た。
「どうかしたのか?」
「例の側室達について調べさせていた件ですが、先ほど密偵から報告書が届きました。その中でいくつか気になる案件が・・」そう言いながら手に持っていた文書を差し出す。
素早く書類に目を通すと、なるほど、彼の神妙な顔つきの理由が分かる。
「これは・・・確かに問題だな。だがまだ証拠が少ない。これだけではうまくはぐらかされるだけだろう、それと、こちらの件だが、これも早急に手を打った方がいいな。」報告書をさらっと速読し早急に片づけなければいけない案件に関して指示を出すと同時に、ジュニュファスが料理長より預かってきた甘味をもって桜華の部屋へ急いだ。
主のいなくなった部屋に取り残されたジュニュファスは苦笑と共に呟いた。
「変われば変わるもんだな・・・まさか惚れた相手にいそいそと甘味をもっていく姿なんて想像もつかなかったが・・・・」
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「・・・んっ」
「桜華様は大丈夫でしょうか?先ほどからずっとうなされておいでですが・・・」桜華の看病に当たる侍女に答えてミルハは己の主の額に光る汗を拭いつつ答えた。
「お医者様の飲ませた解熱剤がそろそろ効いてくるころです。こまめに汗をお拭きして水分を取らせてください。それと、殿下が桜華様のお見舞いに来られるとのことですので、続きの間にてその準備もお願いします。」パタパタと侍女らが接待の準備を始めるのを横目にミルハは先ほどからうなされ続ける桜華の顔を心配げに見つめた。「お医者様はただの風邪だから大丈夫とおっしゃったけど・・・こんなにうなされる桜華様を見るのは初めてです。・・・・・本当に大丈夫でしょうか・・・早くよくなってください。」
静かに寝室の扉を閉めて出て行ったミルハは桜華が呟いた言葉を聞くことはなかった。
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「アルティ! アルティマイナ!!行かないでくれ!其方がどうしてもここに残るというのなら、私も共に!ああ、トトス神よ!!なぜ私の愛しい妻をっ」
「王よ・・・至宝なるアトランティスの王よ。どうか聞き分けてください。民はすでにもう転移を終えております。あとは貴方様のみ・・・どうか、あの子をよろしくお願い致します。私たちの愛しい子をどうぞ良き王となる為に導いてください。さあ、お早く!もう結界が持ちません!!」
「アルティマイナっ!!!」
弾けるように消えた移転門を見届けると同時にそばにいた若き神官らしき男が焦ったように促す
「王妃様!急いでください。もうそこまで火の手が上がっています。この神殿が崩れるのももう時間の
問題です!お急ぎを!!」
アルティマイナと呼ばれた女はもう後ろを振り向くことなく神官の誘導に従って走っていく。
苦しい・・・悲しくて締め付けられるような胸の痛みを感じながら桜華は泣いていた。
「アルティ・・・マイナ・・・?」
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「あれ・・・おかしいな。私何で泣いてるんだ?」なんだかすごく懐かしい・・でも悲しい夢を見ていた気がするが内容に関してはさっぱり覚えておらず袖口で涙をぬぐったとき、居間へ通じる扉からミルハが顔を出した。
「桜華様!お目覚めになられたんですね?よかったっ!ああ・・随分と顔色もよくなられましたね。熱の方は・・・・大分下がってますね・・・良かったですわ。きっとお医者様の処方されたお薬が効いたのでしょう。喉は乾いておられませんか?何かすぐにお飲み物を持たせましょう。」自分が頷く間にパタパタと蝶のように動き回るミルハを眺めていると、なんだかくすぐったい気持ちになる。
熱を出したのはいつぶりだっただろうか・・・体の弱い千早に申し訳ないぐらい病気らしい病気をしたことのない私はぬるめの白湯をゆっくりと口に含みながら考える。日本でいうインフルエンザの一種に近いものだろう、高熱と共に節々の痛み、喉も腫れて珍しく食欲も落ちている。だが、白湯と一緒にお盆にのっているプリンのようなものなら食べれそうだと手を伸ばすとミルハが言った。
「そちらの甘味は王子が桜華様のお見舞いにと持たれたものですわ。滋養のある果物で作られたものですからぜひお食べください。」
「王子・・・が来たんだ?」
「はい。桜華様がお休みになられている間に。寝顔を見て帰られましたが、、、そういえば帰りがけに何か・・ああ創世の巫女姫について学んだのか?と聞いておられましたわ、桜華様は書物を沢山お読みになりますから知っていらっしゃるのでは・・と返答しましたが」
「創世の巫女姫?」
「はい、もしかしてご存じありませんでしたか?トトス大紳にその身を捧げこの世界への移転の門を開いたとされる偉大な巫女姫のお話しですわ」