姉と弟1
かなり遅くなってすみません。7、8月も来客万来でちょっと更新が遅くなると思いますが出来る限り時間を見つけて書くので宜しくお願いします。といっても大分亀になりそうですが・・・。他の小説も1、2話書き貯めていたのをちかじか放出・・というか囚われの王子の方はほとんど終わりかけなのでもしかしたらこちらを一時停止してあちらを終わらせるかもしれませんが、でもこちらの方もできるだけ更新頑張ります。
桜華と王家の秘密について話した後、ティターニアは弟に逢うために執務室へと出向いていた。
来訪を告げるとすぐに扉が開かれ中に迎え入れられる。ぶっちょう面をしてこちらを軽く睨む弟にティターニアはどこ吹く風といった感じだ。
「久しぶりね、アクロティヌス。前回の舞踏会ではほとんど話す機会が無かったからこうやってお前の顔を見るのは本当に嬉しいわ。」
「お久しぶりです、姉上・・・。確かにこうして顔をつき合わすのは姉上の結婚式以来でしょうか・・義兄上はお元気ですか?」
「元気よ。相変わらず本の虫で屋敷の書室に籠っているわ。」
「なるほど・・義兄上らしい。それよりも姉上、私がお呼びした件についてなのですが・・」そういってアクロティヌスは手元にあった書類をテーブルの上に置く。
「どういうことかご説明いただけますか?」
書類を手に取りしばらく眺めた後
「あら・・・。良く調べてあるわ、流石ジュニュファスね。彼のような優秀な部下がいると私も安心ね。」そういって笑みを浮かべたままティターニアは美しい足を組み替えた。
「・・・姉上!ごまかさないで頂きたい。一体どういう思惑で妃候補を王宮に送り込まれたのか?表向きはポリヒュムニア候の養子とはいえ、実際は何処の誰かも分からぬ者、今がどういう時か知らぬ貴女ではないでしょう?!」
「だからこそ私はあの子にかけているの。本当の事をいって貴方も桜華の事が気に入ったからこそ私を呼んだのでしょう?」
「気に入る、いらないという問題ではないでしょう。確かに面白そうな娘だとは思うがあの娘には荷が重すぎる。いくら姉上とポリヒュムニア候が推そうとも他の貴族が黙っていないだろう。それ以前に他の候補達に妃の座を争う相手とも見られてはいなさそうだがな。候補達の間で様々な駆け引きが始まっているがあの娘の周りは至って静かだ。それにあの娘自身、私に近づこうともしないが・・」そういってアクロティヌスは何かを思い出したように小さく笑う。
「・・・。この半年間、バシルがつきっきりで教育を施したわ。稀な逸材だとのお墨付きよ。彼が半端な判断を下すことがないのは貴方が一番良く知っているでしょう?」
「本気なのですか・・?」
「もちろんよ。それとも他に誰かめぼしい候補でもいるかしら?一番有望株のオウラニアは昔からジュニュファス一筋だし、カリオペは家柄も悪くはないけど、貴方の好みじゃないでしょう?エウドラとフィロメナにはまだ荷が重すぎるし、ネオラは問題外ね・・・まさか姉妹揃って召し抱える訳ではないでしょう?
クロエは家柄は文句ないけどあの社交の無さは側室ならまだしも王妃には向いていないでしょうね。まあ水面下ではそれぞれ動いているようだけど・・・。」
「あの娘が彼らに勝ると?ほとんどの者達は王妃になるべくして幼き頃より一流の教育を受けて来た者に半年やそこら勉強した者が?」
「ええ。トトス神の巫女である私が断食の祈りをもってもたらされた娘ですもの。」
「トトス神ね・・本当の所、あの娘は何処から連れてこられたのです?」
「あら・・・信じていないの?本当にあの子はトトス神が使わされたのよ、テラからね。最初は言葉だけでなく読み書きも出来なかったというのにほんの短期間にそれこそ綿に水がしみ込む様にこちらの知識を吸収していった。それに、桜華はかの地に残った我が祖先の血を色濃く継いでいると思うわ。本人はまだ気がついていないようだけど。それに彼女の双子の弟だという千早という者は失われた先見の力を持つそうよ。」
「テラから・・・?!そんな、まさか!いやしかし・・・」
「本当の事よ。詳しい事はあの子に直接聞くと良いわ。
そうそう、それとアンブロシアに逢ったそうよ?」
「え?」
「その報告はまだ受けていないのかしら?」
「いや・・確かにジュニュファスからアンブロシアが部屋から抜け出していたという報告は受けていたが・・。」
「そう。私の聞いた限りにおいては随分と懐いていたそうだけど・・実の父親である貴方以上に?」
「・・・・・。姉上、まさか余計な事を話されたのではないでしょうね?」