王家の秘密3
「色々と根深い問題がありそうですね。」開国したからといってこのアトランティスが早々他の国に攻めとられるという事はないのだろうが、複雑な事情があるのだろうと伺える。だがアトランティスの民の他に原住民が居たとしてそれとアンブロシアと何の関係があるのだろう?
「それにしてもそれと隠し姫とはいったい何の関係があるのですか?」
「さっきも言ったけど、王国全体を守る結界の力は歴代の王を中心として守られて来たのだけど、たまにその力と相反する能力を持って生まれてくる子がいるの。言ってみれば破壊能力とでも言うのかしら・・・生まれつき巨大な力をもった子供達はその力をコントロールする事ができない上溢れ出た過剰な力は歪な力となって周囲に影響を及ぼし、その者が存在するだけで結界に歪みを生じさせる。だからそうやって生まれついた子供はその力を抑える為に作られた封具を身につけ、同じく力の制御をする為の特殊な部屋で一生を終える事になる・・。
子供には何の罪もないのは分かっているけど、ただでさえ命を削るような結界の維持を綻びさせる訳にもいかない・・・。
現在の王である私たちの父も、もうそろそろ結界を維持するのが厳しくなってきている。あれは特に命を削るのよ。お父様はまだ50歳になったばかり・・・でもとてもそんな風には見えなかったでしょう?」
「・・・はい。」
そう今まさに年齢を聞いて吃驚だ。初めてこのアトランティスの元王に会った時、見た目だけで言うなら、それはまさに老人だった。あんなに年をとっても子供ができるのかと内心驚いていたのだから・・。この国の医療も地球の先進国と同じぐらいに技術が進んでいる。平均寿命もほとんど日本のそれとかわらない。
だがどんな力を持つ一族であっても、老いと死を迎えることは変わらない。50歳の男性が老人に見えるということはそれだけ精神力などを消耗するのだろう。ということは次代の王であるアクロティヌスも同じ運命を辿るのだろうか。
「・・あんな小さな子がずっと外に出られないままで一生を終えるんですか?どうにかして力をコントロールする方法は他にないの?」桜華は知らず知らずのうちにぎゅっと手を握りしめた。
「難しいわね。王宮でもアンブロシアが生まれる以前から様々な研究がなされているけどまだこれといった対処法は見つかっていないわ。ただ遥か昔にはそういった不安定な力を持つ子が生まれた場合に力を安定させる能力をもつ者が存在したようなのだけど、何百年も昔の話だし、今は国中探してもそんな能力をもった者がいた試しがない。それらの記述についても王宮にある古い文献の中でも曖昧にしか書かれてなく、詳しい事はわからないのよ。
でもこれは最近の研究で分かってきた事なのだけど、そういった歪んだ力を持つ子供が生まれる背景には個人の持つ力の差が大きく関わっているらしいわ。アクロティヌスは次代の王に選ばれるだけの素質と能力を秘めている。それどころかあの子は歴代の王と比べてもかなり大きな力を持っているのよ。それに対してディオルカが彼の能力を受け止めるだけの器をもっていなかったという事なのでしょうね。あの娘は生まれつき体が弱かったから・・・。
アンブロシアはまだ王家に、いえアクロティヌスの子として生まれただけましな方かもしれないわ。呪われた子としてその能力を持つために殺された子供達も少なくはないのだから。
ディオルカが出産を終えて、その赤子が禁忌の力を持っていると知れた時のアクロティヌスの顔は今でも忘れられないわ・・・。そしてその為に起こった悲劇も・・・・。
生まれた子供がいくら次代の王の娘とはいえ、存在自体で国を揺るがすような力をもって生まれた子供・・。それゆえ表向きは隠し姫として王宮の奥で育てられる事が決まったにも関わらず、半年後、アンブロシアに差し向けられた刺客から身を挺して守ったディオルカが死んでしまった。そういうことを企みそうな輩は憶測がつくものの有力な手がかりを得る事ができず結局真相は闇の中。あの時から弟は変わってしまったわ・・・。」そういってティターニアは悲しそうにその瞳を伏せた。