王家の秘密2
そう、最初から感じていた違和感の正体はこれだったのだ。これだけ地球と似た環境で家畜や動物達が居るのにアトランティスからの移住者だけしかいないのはおかしいのではないか。
「この世界に住んでいた先住民とはどういった人達なのですか?」
「姿形は私たちと変わらないわ。遥か昔祖先達がこの地に降り立った時、この世界に住む人達はまだほとんど文明というべきものを持たない民だった。彼らは当初いきなり天から現れた祖先を神としてあがめていたというわ。私たちは彼らから土地を譲り受け、その代わりに知識を与えた。
けれども幾世代もの時が過ぎるにつれ、彼らは貪欲になってきて私たちが与えた以上の物を奪い取ろうとしてきた。初期にアトランティスの民と交わった先住民の中には幾人か私たちと同じような力を持つものがでてきて、彼らは彼らが治める国の王となりアトランティスの地へ度々攻撃を仕掛けてくる様になったの。
その時の王がこれ以上無駄な争いを避けるためにアトランティスの民を一所へ集めて結界を張った。一所といっても大陸まるまる一つだから大変よ。それから代々守る力、つまり結界を作る能力が一番高い者が王として立ち、残りの王族と貴族はそれをサポートする役目を負っているの。
王が沢山の妃を娶って子が多いのはそのためもあるのよ。だけど、血族間での婚姻ばかりが進むにつれ、なかなか子が出来にくくなって来ているのも事実・・。特に強い力をもつ者が少なくなって来ている。
この時代は比較的穏やかな状況が続いているけど、それでもやはりそれはアトランティスを守る結界があるからだわ。もしこれが壊れたら・・・また攻撃を仕掛けてくる国がないとも限らない・・・。」
「アトランティスの地の外にはどれくらいの国があるんですか?」
「3年に一度、私たちは外部の使者を受け入れているのだけど、前回訪れた使者は今、アトランティスを含む4つの大陸に数十の国々があると聞いているわ。滅びる国もあれば新しくできた国もあるのでしょうけど、ここ100年ほどは、国の数も落ち着いてきているみたい。」
「使者はどういった用件でこられるんですか?」
「そうね、彼らの国からまた代表が選ばれて、3人が結界を抜けてこの地に入る事が許されるのだけど、大抵は私たちの知識をもっと流通させるようにといった嘆願の事柄が多いわ。国によっては脅しをかけてくる所もあったりするしね。私たちはできるだけ彼らと関わりを絶つ事をここ数百年を貫き通してきたのだけど、最近キナ臭い動きが国内外で報告されているみたいなのよね。」
ふむ・・・。つまりこの国が維持する文明の恩恵を受けたい外の国と、関わりたくないというアトランティス側では鎖国状態が続いており、周りの諸国が開国を促しているということか。
「開国・・・はしないんですか?」
「今迄も、この国の中枢となる8大諸侯の間で議論が行われてきたわ。特に北を治めるパナギョータ家の当主は開国に強い意欲を持っているようね。はっきり言って、簡単に開国といっても様々な問題と障害があるのよ。だからこそ今迄この数百年の間、血が濃くなりすぎるリスクを犯しても外との接触を出来る限り絶ってきたのだけど・・・。」そう言いながらティターニアは息を吐いた。