図書室で
更新が遅くなってしまい申し訳ないです。娘が水疱瘡にかかってしまい,1週間手つかずでした。
しばらくの間、図書室の中で参考になりそうな本を物色していた桜華。10冊ほどの本を抱え満足げに出て行こうとしたとき、ふと誰かの視線を感じて振り向いた。
そこにいたのはいつか見た幼い子供だった。今回も本棚の陰に隠れるようにしてじっとこちらを見つめている。
「この間の・・・?」
なんでこんな所にまた小さな子供がいるのかと図書室を見回すが,普段からあまり訪れる人の少ないこの図書室にいるのは桜華とその幼児だけだった。
「えっと、どうしてこんな所にいるの?あなたのママは何処にいるのかな?」怖がらせない様にゆっくりと近づきながら桜華が問う。
「ママ・・・?」
「そう、ママ・・は何処にいるの?」そういいながら桜華はゆっくりとしゃがみ込み相手の目線に合わせて微笑む。
すると子供はわからないと言った風に問い返し桜華をゆっくりと指差す。
「え?いや、私あなたのママじゃないけど・・ってまあいいわ。えっと、あなたのお名前はなんて言うの?」
「・・・アンブロシア」
「そう、素敵な名前だね。私はオウカっていうの。」
「オウ・・カ・・?」
「そうだよ。アンブロシアの事シアって呼んでいいかな?この間もここにいたよね。ここまでどうやって来たの?」
「・・・・・。」
「ええっと、答えたくないって事なのかな。」
怒られると思ったのかアンブロシアは桜華のドレスの裾をぎゅっと握りしめうつむいてしまった。
「えっとね、怒ってないよ?大丈夫。ただシアがこんな所に一人でいるから心配なだけだよ。ね、大丈夫だから。」
そういって抱きしめるとアンブロシアもぎゅっと桜華にしがみついてきた。そのまま抱き上げてどうしようかと悩む事数分。
仕方ない、一度部屋に戻るかときびすを返した。せっかく選んだ本は後で侍女に取りに行ってもらおう。そのまま、アンブロシアを連れ部屋に戻ると丁度ミルハがお茶の用意をしている所だった。
「桜華様?この方は・・・?」
「んー、なんていうのか迷子?なのかな。図書室で出会ったんだけど、名前はアンブロシアって言うんだって。」
「まあ!」驚いて近づくミルハを警戒しているのか余計にぎゅっと桜華にしがみつくシアを可愛らしく思うものの、本当に迷子なら親が今もずっと探しているだろう。
ミルハに指示をだし、母親か父親らしき人物を探して来てもらう事にし、丁度お茶と一緒に出されたお菓子をシアと一緒に食べながら待つ事約一時間、困惑したミルハが共に連れ帰ってきたのは、いつかの顔合わせの儀で王子アクロティヌスの側についていた文官らしき男と乳母だった。