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接触

宮廷晩餐会及び舞踏会、それは今回王となるアクロティヌスの正妃及び側室候補を貴族達に正式に紹介する場でもあり、またそれはそれぞれの候補達、そしてそれに連なる家族、一族達の駆け引きの始まりの場所でもあった。

形式的な挨拶が終わった後からあちらこちらでどうにかして自分の娘を印象づけようと王子とその側近の周りに人だかりが出来ている。


義父と私は彼らから少し離れた場所でゆっくりと座っていた。形式通りの挨拶さえ済ませてしまえば、別にわざわざ好き好んで王子の近くへ行く必要はない。だが、王子とは離れて陣取っているにも関わらず、かなりの数の好奇の目線が突き刺さる。先ほどから、幾人かは当てこすりで久々に公の場に姿を表した義父の元へやってきては適当にあしらわれ、憤慨しながら去って行く。またそれとは別にポリヒュムニアの養子となった桜華に対しても好奇の目は注がれていた。


この晩餐会にはもちろん王姉であるティターニアも来ていたが、王子と同じく,人だかりの中に埋もれてしまっている。

しばらくして後アドニスがバシルを呼びに来た。こんな?義父でもやはり、幾人かはちゃんと挨拶を交わす友人がいるらしい。一人で大丈夫かと聞かれたが、問題ないと言うと義兄と一緒に席をはずす。


「少しよろしいかしら?」あくびをかみ殺していた桜華の前にふとある人物がやってきた。

「はい?」突如やってきた人物に少々驚きの目を向けながら桜華はじっと相手の顔を見つめる。

「先日の顔合わせの義で、拝見してから一度貴方と話してみたいと思っていたの。」

そういって魅力的に微笑んだのは北の惣領姫、オウラニアだった。


「ええと、確かオウラニア様・・?」

「オウラで良いわ。私も桜華と呼んでも宜しいかしら?」

「はい、全然かまわないですけど・・。」ティターニアが大輪の薔薇の華であるなら、オウラニアは凛とした水仙のような気品を纏った女性だった。他の候補達の様に殺伐とした雰囲気は感じられない。


穏やかに微笑みながらオウラニアが尋ねる。

「貴方は王子の元へは行かないのね?」

「ええ、まあ・・。」別に行く必要もないのでと心の中で付け加える。

「ふふ、面白いのね。あのポリヒュムニア候が養子縁組をしてまでこの妃選びに参加させた娘が居ると聞いて、ここにくる前から楽しみにしていたのよ。」


「そう・・なんですか?でもオウラこそ何故王子の所へ行かないんですか?」他の候補達はずっと王子の周りで気を惹こうと頑張っているというのに。

「ああそう、貴方は知らないわよね・・。私たち幼馴染みですの。別に今更取り繕ってべたべたしに行かなくてもある程度お互いの事は知ってますわ。」そういってオウラニアは軽く肩をすくめた。

「なるほど、幼馴染みなんですか。じゃあ、幼馴染みから見て王子ってどういう人なんですか?」

「あら、貴方を見ていたら珍しく王子にあまり興味が無いのかと思ったけどそうでもないのね?」

「いや、興味はまったく無いですけど、一応会話上流れとして参考迄に聞いておこうかと思ったぐらいで・・・。」


「っぷ。本当に貴方、面白い方ね。王子に向かって素でそこ迄興味無いって言う子初めて見たわ。気に入ったわ、桜華。本当に何故養子になってまでこの戦争に参加したの?聞きたい事は沢山あるけどそうね、今度ゆっくり私の部屋に遊びにいらっしゃい。色々と・・・王子の事なら教えて差し上げるわ。」

「はあ、どうもありがとうございます?」別に知りたくないですけど・・。一応建前でお礼を言っておく。


それからしばらく当たり障りのない会話をした後、オウラニアと入れ違いで義父達が戻ってきた。


「ふむ、今のは北の惣領姫じゃな。」

「ええ、わざわざご挨拶に来てくれまして。」

「なかなか良い女子に育ったようじゃの。まああの娘は昔から頭の回転も早かったからな。」

「ああ、王子と幼馴染みだって言ってたから、もしかしなくてもお義父様の教え子だったって事ですか?」

「そうじゃ、しばらくの間であったが、王子達と一緒に勉学を教えていた。正妃候補としてはかなり有力な一人じゃな。」


「ああ、うん、頑張れーって感じだよね。」

「っくっくく。これ、お前も一応候補の一人なのじゃぞ?もう少し張り合ったらどうじゃ?」

「どうじゃて言われても・・・。」とりあえず私の目的としては、アトランティスの資料と共になんとか帰る手だてを見つける事なんだけどな。明日は朝一からもう一度図書室へ行ってみようと考え込む桜華だった。


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