詮索2
投稿が遅くなってしまいました。この2ヶ月、母の入院、娘の病気など色々と重なってしまい忙しくしてましたが、また週に1、2回はアップできるように頑張りますので宜しくお願いします。
「初めまして。貴方がポリヒュムニア家の・・?」
「オウカと申します。アクロティヌス殿下にあらせましてはご機嫌麗しく、ご尊顔を拝しーー」
事前に教えられた通りの挨拶を型通りに済ませようとした桜華を遮りアクロティヌスの低く落ち着いた声が響く。
「堅苦しい挨拶は必要ない。貴方は私の花嫁候補なのだから、もっと気楽に接して欲しい。」微笑みながら暗に目で語りかけてくる。
ーーーーそれがお前の素ではないのだろうとーーーー
乾いた微笑みをかろうじて引っさげながらしどろもどろに返答を繰り返す。ていうか、なんでこんなにしつこいのよ、この男!他の候補達とはそっけないぐらいにさらっと挨拶をかわしていたのに。次に行けっての!という心の願いが通じたのか、お付きの人っぽい男の人(これまた美男子)が王子を催促する。
「王子、今宵はまだ顔合わせの議にて、オウカ殿との語らいはこれ迄に・・?」
そうそう、まだ半分残ってんだからさっさと他の候補達の所へ回れと眼力で訴えてみる。と、先ほどまでうかべていた上辺笑いを引っさげ、背筋が凍るような魔王的笑みで睨まれた。
「王子・・・?」
訝しげにお付きの人が顔色を伺う前にまた手のひらを返したように完璧な笑みを貼付けると、すっと私の手を取り、口づける。
「ではオウカ、またの機会にゆっくりと・・?」
優雅な足取りで次の候補の元へと去って行った王子を目の端に留め、気づかれないぐらいの小さなため息をついた。
「桜華様?大丈夫ですか?」付き合いの長さか、ミルハだけはそれに気がついた様子で心配そうに覗き込んでくる。
「大丈夫」そういって微笑んでみせる。
安心したようにミルハが言葉を繋ぐ。「それにしてもお噂にたがわぬ美貌と色気ですわね、さすがティターニア様の弟君ですわ。それにあの桜華様を見つめる情熱的な瞳、思わず私が失神してしまいそうでしたわ。絶対あれは桜華様のお美しさにまいられたに違いありませんわ!」
情熱的・・?あれがそう見えるのか?どう見たって喧嘩売ってるんじゃないかと思うようなあの悪魔的笑みが?
「いや、違うと思うけど・・。」
言葉少なく相づちを打つ私を見てミルハは私が他の候補達と同じく王子の魅力に呆然としているのだと思ったらしく一人で納得しているようなのだが、あえて突っ込むのも面倒なのでほっておく事にする。
結局することもないので、また一人一人、大抵同じような挨拶の繰り返しをしながら、部屋を回っていた王子を観察していると最後の一人との顔合わせで少し違った様相を見せた事に興味を抱く。
相手はネオラだった。ネオラ本人は他の候補達と同じく王子の美貌に見とれているっぽいが、対する王子の様子が少しおかしいことに気がついたのは桜華を含めほんの少数であった。
表面上同じように完璧な笑みをもって接しているのだが、桜華のときと同様、なにか他と違うものを感じる。桜華はその変化には気がついたものの、ネオラと王子を見比べながら、一番年下の少女を気に入るなんて、顔の割にロリ入ってるのねなどと失礼な事を考えていたのだった。