詮索
今回少し短めです。娘共々風邪を引いて寝込んでたので投稿が遅くなってしまいました。これからもゆっくりですがおつきあい願います。
瞬間王子に興味のない桜華でさえ一瞬息を飲んだ。ティターニアの弟なのだから、容姿は良いだろうと思ってはいたがこれほどとは思わなかった。
出発前に、こちらの世界で発達したコンピューターのようなものでプロフィールを見せてくれる予定だったのだが、何かと忙しく後回しにして、どうせ結婚する予定でもないし、どうせ本宮に行けば本人に合う事もあるだろうと見ていなかったのだ。
それにしても眉目秀麗、美麗衆目という言葉がこれほどぴったりくる人物を続けてお目に見る事になるとは・・いうまでもなく一人目はティターニアだ。他の妃候補も普通以上に整った美人ぞろいだが、この二人はまた次元の違う美形だ。
その上、男のくせに妖艶で王姉に勝るとも劣らないだだ漏れな色気。正直これほどまでの美しい男は見た事がなかった。ちらっと周りを見回すと、妃候補どころか侍女たちまで完全に目がハートになっている。
(うわあ・・・女装させたら絶対ティターニアにそっくり。さすが姉弟だなあ。遺伝子ってすごい・・。)
他とは違う意味で観察、納得しながら桜華は王子アクロティヌスを見つめる。
各候補達が、それぞれに挨拶を順番にかわして行く。時々お久しぶりですと言った言葉が聞こえるところをみるとほとんどの妃候補とは面識があるのだろう。まあ、力ある貴族の娘達が候補になっているのだから当たり前なのかもしれないが。8大諸侯と呼ばれる王家に近い貴族から4名、そして他の2名はそれに次ぐ位をもつ貴族の娘だったはず。他の4諸侯は、息子しかいないか、もしくは娘がいても、王子とは釣り合わない年回りだったなどの理由で推薦されていない。
本当に王子と面識がないのは自分ぐらいなものだ。最初いくらティターニアの言うように古代からの儀式を何よりも大切にするこの国でトトス神に選ばれたとはいえ(桜華自身はそうは思っていないが)異界からきた一般人が候補として参加するのはどうなのかと思っていたのだが、さすが、ティターニア、この半年の間でかなりの根回しをしたらしく、いつの間にか自分はその王家に近い8大諸侯の一家、ポリヒュムニア家の養女とされていた。
ここにくる前の何かと忙しくの一旦には、この家との関わりがあったことはいうまでもない。王姉とはかなり深い縁があるらしく、こちらの意見も聞かずに勝手に養女の件を承諾し、短い間に貴族としての何とやら・・・を徹底的に叩き込まれた。
あのおっさん・・もとい養父は涼しい顔をして、ティター二ア以上の狸だった。はっきり言って思い出したくもない出来事だ。思わず顔をしかめたところ、ミルハの焦ったような声が耳に届く。
「桜華さま・・!」
はっとして目線を上げると、いつの間に目前まで来ていたのかアクロティヌスの深い青緑の視線を浴びていた。とっさに取り繕たように微笑んでおいたが、きっとしかめ面の表情を見られたのだろう、少し興味本位の視線が突き刺さる。
ゆっくりと手を差し出しながら王子が聞いてくる。
「初めまして。貴方がポリヒュムニア家の・・?」
確かに甘いマスクをして微笑んではいるが目が笑っていない。まじかで王子の表情を見ながら一瞬にして桜華は悟った。やはりティターニアの弟だ・・、この表情に騙されてはいけないと・・。