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マチルダの見た鳥

掲載日:2026/09/23

マチルダの見た鳥


スティーブ・アラン 探偵

ジム・モートン 記者

ベン 作家

マチルダ 大学生

老人 釣り人


1.ベンへ


ロンドンでは楽しく暮らしていますか?

困ったことになりました。実は私に殺人もしくは過失致死罪の容疑がかかりました。

私の引いていた馬に乗った老人が振り落とされ、拍子に岩に頭を打ち付け亡くなりました。

悲しいことです。私はこの仕事を続けられません。少なくとも、嫌疑が晴れるまでは。

ついては、あなたに良い探偵か弁護士を紹介して欲しく、連絡しました。よろしくお願いします。


吉報お待ちしております。


親愛なる ベンへ マチルダ


ベンにこの手紙が届いたのはあの島から帰ってきて1ヶ月経ったある日だった。驚いたベンは急いで背広を着て、トーストをかじり、紅茶を流し込んだあと、探偵で知り合いのスティーブ・アランに電話をかけた。


これこれこういうことで友人が困ったことになったと、スティーブに一部始終話すベンだった。


ジムはスティーブに問う。

「スティーブ、どうするんだい?助けられるかい?」

スティーブは「島へ行ってみよう。マチルダに聞いてみたいこともあろうからね。」と言う。

明日、出発することになった二人だった。付く前にマチルダに電話をかけた。マチルダとベンとは島のホテルで合流することになった。


翌日、しっかりと朝食を済ませた二人は事務所を出て船の発着所までの列車に乗っていた。

「スティーブ、勝機はありそうかい?」心配そうなジムにスティーブは応える。「何か彼女の無実を証明できる材料があればいいんだけどね。」と。

「材料、証拠だね。」

「うん。」


それきり黙り込んで目を閉じてうつ向いているスティーブだった。


船着き場から船に乗り込む間も、船が出てクルージングしている間もほとんど口を利かず考え込むスティーブだった。


船に揺られ長い時間が経った。灯台のサーチライトが波止場を照らし始め窓の外の景色に気づいた二人だった。


錨を下ろし停泊した船からおりてホテルへ向かう二人。ホテルでマチルダとベンが困り果てていることだろう。


短時間でそのホテルについた二人をベンが迎え、マチルダに会わせた。

「紹介するよスティーブ、マチルダだよ。彼女はイタリア出身の大学生だよ。」

「分かったよ。それで彼女は乗馬体験のアルバイトをやっているのかい?」

「そうなんだ。彼女は毎年、夏休みにここでその仕事をする趣味なんだ。」


こうして、事情を飲み込んだスティーブとジムは二人と夕食を共にし、その後、次の日から始まる調査に向けて、大事な眠りをとった。


夕食のときマチルダが言っていたことは...

実は今回の事件のとき彼女は珍しい色の大型の鳥を見たという。馬はその鳥のあまりの迫力にビックリして立ち上がったというのだ。老人は頭を打ち付け亡くなった。

マチルダは卒倒したが、その時、頭を冷やして、その鳥はまだいないか探したという。 鳥はもういなくなっていたが、その時羽ばたいた鳥の羽根が地面に落ちているのを発見して、拾っておいたのだ。

彼女はその羽根をさっき、スティーブに渡した。スティーブはその羽根を重要な参考証拠としてジップロックに入れた。


スティーブによると勝機はあるという。

その鳥の姿をもう一度同じ場所へ行って発見できれば、その写真が証拠になり、彼女の免罪があり得るという。なにしろ、その羽根に亡くなった老人の血が撥ねていたのだから。


2.さあ、この日の朝から、謎の鳥探しが始まった。

四人は砂浜から馬の繋いであるところへ向かった。

まずは、馬の状態を見る。

馬はすらりと立ち、平然としている。確かにこの馬が鳥を見て飛び上がったというのだが、一切怪我はしていない。可愛がるように馬の首を撫で餌を与えるマチルダだった。ベンも確かにこの馬は変わっていないと言う。


老人はいつも釣りをしていて折り畳みチェアに座っていた。

そして、この前は気が向いてマチルダに乗馬を頼んだということだ。

まずは、四人で林に入って行った。


しばらく歩き、林が終わり、草原が開けてきて、そのまま、フィールドを歩いて行く。鳥らしき姿は小鳥たち以外には高いところを飛ぶワシ類だろうか?それしか見えない。フィールドなら見渡す限り見えるのですぐに派手な色の鳥なら目につくだろう。


一行は再びその先の林に入りしばらく、小鳥達を見ながら歩いて行く。と、せせらぎに着き、マチルダの薦めでやはり、清流の水を飲んだ。相変わらず水は冷たく美味い。

輝く水面にはメダカや鮎のような魚が泳いでいるのが見える。

「いいカメラを持ってきたからね。バッチリ、撮ってやろう。」とジム。

カメラはジムに任せる。スティーブはできれば鳥を地面の上で取り押さえて羽根でもむしって帰りたいという。

確かに、より証拠能力の高い材料が欲しいのだからそうだろう。


引き続き、あちこちに目を向けながら進んでいく一行。ベンも水を飲んで美味かったことやその後、海の方へ戻っていったことを思い出していた。

彼女の美しさに目を向ける余裕もなくなったことが恨めしい。

彼女の表情には恐怖感が映っていた。


再びフィールドから林に入りしばらく、行ったところでマチルダが皆を止めた。「このあたりの岩に頭を打ち付けたわ。」と言い、岩を探し始めた。その時スティーブも下を見始めていて「あ、あった。血痕だ。」と岩のいくつかから血のついたものを見つけ出した。

岩は丸く固そうだ。

日本のお寺にあるような丸い岩ばかりだ。

「よし、このあたりで鳥が来るのを待とうよ。まだまだ日は長いよ。」と撮影する気満々のジムが言う。

できうる限りの目立たない草陰に身を潜めカメラを待ち構えるジムと三人だった。


それから、30分、45分、1時間と時が経ち一行の疲れと注意が散漫になるのではないかというところで、多くの小鳥たちとは少し違った音色の声が聞こえたようだった。「ん?ジム今聞こえたかい?鳴き声が。」とますます、息を殺して囁くスティーブに「ああ、聞こえたよ。」とジム。ベンとマチルダもスティーブを見て頷く。「さあ、その時が来るぞ!」とスティーブは肩をいからせる。


ジムはカメラの準備をする。「いつでも、撮れるよ。」


その時、マチルダがクシャミを少ししてしまった。と、フィールドの方角から、あれはエメラルド色、ロイヤルブルー、それに黄色い筋の入った大型の鳥が飛来してきた。

「撮れジム!」と指図するスティーブ。ジムはカシャカシャと連続で15枚ぐらい撮った。その瞬間、スティーブが飛び出し鳥に飛びかかる!鳥は急激に飛び立とうと羽根を羽ばたかせた。スティーブの手が鳥の羽を掴む。と、鳥はスティーブの手を振り払って飛び上がった。


飛んでいった鳥の下でスティーブは立ち尽くし、あとを目で追っていた。

スティーブの手の中には鳥の羽根がちぎれて数枚収まっていた。


かくして、一行は今回の事件の重要な証拠となる品を持ち帰りホテルに向かった。

写真と羽根。

確かに、カラフルな幻のような鳥の姿だった。

あとで鳥類図鑑を見ていくとあの鳥は載っていなかった。新種となる鳥だろうか?他の土地から飛んできたのだろうか?

証拠の品はスティーブによって弁護士に届けられ、裁判官に見届けられた。

写真、スティーブが取った羽根、血のついた羽根が証拠として一致し、マチルダの無罪放免が確定した。


丁重にスティーブとジムに礼を言い、ベンとマチルダも抱き合った。マチルダを救うことができたベンは心の底から嬉しかった。


船で島を離れるスティーブとジム。ベンとマチルダは島に残った。

潮風を浴び満足気なスティーブにジムがビール瓶を差し入れる。「よくやったね。今回は。」「君のお陰だよ。」とニヤリと笑うスティーブだった。乾杯を酌み交わし、余韻に浸る二人。灯台のサーチライトが二人の乗る船にサヨナラを言うようで少し寂しくもあり、また、幸せなスティーブたちだった。


後にマチルダとベンから写真付きの手紙が来て彼らに礼を言った。その写真には二人の晴れ姿が。二人は結婚したのだ。



fin

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