国会答弁に窮した妖怪人間高市早苗、ぬ〜べ〜に除霊される
高市総理は文春砲の連射を受けて国会答弁に立つも、曖昧な回答に終始していた。
「記憶にない」「真摯に対応する」といった語彙も使い果たしてきた。
カメラに映る姿は疲弊している。
今日は、いつもの右手の黒ギブスに加え、眼帯に包帯に車椅子に松葉杖の様相で答弁に現れた。
「総理!週刊文春電子版は月額2,200円、初月300円と大変お得です。月間会員になるだけですので内容を確認ください!」
「300円ありません」
この調子でのらりくらりと国会論戦を巧みにかわしていた。野党議員がぼそっと
「ゾンビかよその恰好」
とつぶやくと、瞬く間に20台のスマホ農場、100を超えるアカウントによってTicktockへ拡散され、日本の将来を担う健康優良児たちのドーパミン放出を促した。
「あの議員が高市総理の悪口言ってる!」
とむしろ追及する議員の方が炎上で陳謝に追い込まれる事態となり、野党議員は手をこまねいていた。
いっぽうの一部の自民党議員からも批判は噴出しており「同情を買うための安い作戦」と陰口をたたかれていたが、だれも次の閣僚になりたがらないので放置されていた。
そのため、右手も当然ウソだろうと与野党から揶揄されていた。
高市総理の狙いはひとつ、緊急事態条項発動により戒厳令を出し、台湾国民党のように一党専制化をすすめすること。
そしてもうひとつ、この国会を真の意味で人間のものにすること。
この手で、この国を強く、豊かにするための決意は固かった。
そのためなら、高市早苗はどんな卑怯卑劣とののしられようと耐えるしかない、固い決意があった。
「総理!もう3万4千回目ですよ!いい加減、お認めになったらどうです!」
「記憶に・・ふぅ・・!ご・・ございません・・」
ある日の国会論戦では、高市総理は右眼底を真っ黒にした姿で現れた。プロボクサーに眼底を叩き折られたが如き様相である。
Ticktockは同情の声で溢れた。
次の日、高市総理は全身包帯、さらに次の日はクリーパーのように全身真緑、また別の日には泥田坊の姿で現れた。
「違法な動画の作成に手を染めたのでは」
「うう~ぅ・・ うう~ぅ・・」
「この人物と会ったことがあるでしょう」
「うう~ぅ・・ 田を返せ・・」
「そもそも米連邦議会立法調査官とはなんですか」
「うう~ぅ・・ うう~ぅ・・」
高市総理は答弁にならないうめきを繰り返す。質問時間が溶けていく点では「記憶にございません」の繰り返しと大差なかったが、その苦しんでいる様子が切り抜き動画で毎回バズっていた。
「高市総理、野党のしつこい質問を見事論破!震える野党」
「【感動】俺たちのサナエ、命を削って日本を守る」
「与野党双方から感嘆の声、世界が日本の妖怪を称賛」
といったサムネ見出しが躍った。
圧倒的議席数を持つ自民党に対して、不信任決議を野党はだせない。高市内閣が自ら下りない限り、2030年2月7日の任期満了まで、野党は追及し続けるしかない。
世論は、「いつまでやってる」「ほかにやるべき議論がある」「サナエガーしかいえないのか」「そもそも違法動画をばらまくことの何が問題かわからない」といった風に傾いていった。
Ticktockでは、高市総理は夫の介護、持病、日々の報道対応、イランとのナフサをめぐる外交、毅然としたアメリカへの対応などで疲れていらっしゃる、休ませてあげて欲しいといった応援の声があいついだ。
いっぽう、「いやどう見ても詐病で同情ひこうとしてるだろ」「国会議員が普通そんなにケガしないだろ」「海外に行くときだけ元気だぞ」といった、心無い批判の声も少なからずあった。
たしかに、高市総理の右手は、就任当初はマスキングテープで覆われていたが、しだいに黒ギブスや手袋などに代わっていった。不思議なことに、諸外国での外遊ではこれらは外されている。
業を煮やした野党はついに起訴に踏み切った。
自民党絶対無罪にするマンこと畝本直美検事総長は、その年の夏ごろに謎の失踪を遂げていたため、起訴のハードルは下がっていた。在宅起訴された高市総理は地裁と高裁で相次いで有罪判決、最高裁まで争った。しかし、最高裁での高市陣営には奥の手があった。統治行為論である。
さかのぼること50年代、活動家が米軍基地進入した事件において、「そもそも基地の存在が合憲か違憲か、憲法9条違反ではないか」という点が裁判の争点になった。
この事件を砂川事件といい、国家の高度な政治活動に最高裁は判決を出せないとする結論をだした。これを統治行為論という。これは最高裁第2代長官田中耕太郎が当時の駐日大使ダグラス・マッカーサー2世と密儀を交わし、内部情報を米国に流し、また米軍基地が違憲にならないよう取り計らうよう約束したことで、この結論を生み出した。つまり、三権分立の放棄である。
いっぽうの高市陣営も野党に対して名誉棄損で訴え、泥沼の様相を呈していた。
「うめき声しか国会答弁で出さず、SNSでは流暢に発信する二重性は妖怪のそれである」
というある野党議員の発言がきっかけとなり、名誉棄損か事実か、また妖怪が悪口かなど議論はめぐりめぐって
「そもそも、高市早苗は妖怪か人間か」という点が裁判の争点になった。
ここで、妖怪の専門家の意見が必要になった。
童守町教育委員会副委員長から同町町議会議員を務めていた鵺野鳴介元校長、通称ぬ~べ~先生が野党を通じて証人喚問の場に呼ばれた。
清閑な顔立ちに白髪の混じった太い眉の下から放たれる鋭い眼光が高市総理をじっと見据えた。
「ここはずいぶん妖気が濃い。あなたが妖怪か人間か、簡単に判別する手段があります。」
長い数珠に経本をとりだし、両手を合わせてゆったりと、明瞭なバリトンボイスで唱えだした。
「宇宙天地 與我力量 降伏群魔 迎来曙光・・・」
すると、高市総理は苦しみだした。
「ぐぐ、貴様、アニメ版のお経など唱えおって・・」
おお、ひさびさにしゃべったぞ、と国会内がざわつくと同時に、水にぬれたグレムリンのように高市早苗は全身が溶け、面妖な正体を現わした。
「やはり、貴様は妖怪でも人間でもない哀しき存在、妖怪人間だったか!」
ぬ~べ~は左手の黒い手袋をはずした。
「わが左手に封じられし鬼よ 今こそその力を示せ!鬼の手!」
「ほう、それが鬼の手か。では私も」
高市総理も、ゆっくりと右手の黒いギブスを外した。
ぬ~べ~は信じられないものを見る。
「なに!貴様も鬼の手を!」
「早く人間になりたい!」
互いの妖気が充満した国会議事堂で、戦いの火ぶたが切って落とされた。
その後、約60時間かけた死闘の末、ぬ~べ~は妖怪人間高市総理を倒した。
高市総理の黒い手袋から、畝本直美が身に着けていたネックレスがポトリと落ちた。
「まさか、日本中の妖怪をこの体に宿すことで国会を魑魅魍魎から守っていたのか」
日々ボロボロだったのは、誰もいない夜中に国会で戦っていたからだ。畝本直美夫妻という古狸を葬ったのも、この高市総理だったのだ。
「高市、おまいだったのか。いつも国会を守ってくれていたのは」
高市は、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。(了)
後日、被疑者死亡のまま送検された高市早苗をめぐって最高裁は統治行為論を上げて事実上の完全黙秘を貫いた。後の「妖怪人間ベロ事件」である。
ちなみに、泥田坊くらいはまでマジでやるとおもう




