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05



―――



草薙が僕の顔を上から覗き込んでいた。



背筋が寒くなるほど冷たい目をしている。


彼女は無表情のまま言った。



「……死ねば?」



(ハッ!!)



汗びっしょりで目覚めたとき、本当に誰かが上から覗き込んでいた。



「ふにゃ!?」ガツ!!!



慌てて身を起こした僕と「誰か」の額が思いっきり激突した。



僕はベッドに叩きつけられ、向こうは僕のすねあたりで尻餅をつき、大の字になったようだ。



「イッテェ!!!」



頭の痛みより、足の痛みを先に感じた。


星がちかちかと目の前を行き来している。



「それはこっちのせりふだ、この石頭……!!」



その声は少し高めで、女か、少年のように聞こえた。



少なくとも、家族のものではなかった。


その「不審者」は、額を押さえて起き上がった。



「石頭はお互い様だろ……!?どうでもいいから早くどけよ」



直接ぶつけたところより、その奥が痛む。


部屋がぐにゃぐにゃに歪んで、ぐるぐる回っているような気がした。


僕はずっと額を押さえていた。



「あー……クラクラする」



「彼」がようやくどいてくれた。


僕は起き上がってからはっと気が付き、指の間から暗がりの相手をうかがった。



「……Who are you?」



「疲れてるようだな」



「彼」は質問に答えなかった。


風に揺れたカーテンの間から、外の明かりが差し込み、その顔を一瞬だけ照らした。



「……!?……」



時田のことを「ハンサム」だとさっき言った。



草薙も目鼻立ちが整った娘だ。



だが、目の前の奴はそれ以上の美形だ。



中性的、というか、少年でも少女でも大丈夫なギリギリの所を保った顔をしている。



そして、Tシャツにジーンズという格好が、細くて長い手足を強調していた。



「……Who are you?」



「その問いは一度無視したんだがな」



「……だからこそもう一度聞いたんだがな」



もう一度風が吹き、今度はカーテンが「シャーッ」と動いた。



外の電灯が映し出した顔は、さっきと同じく全くの無表情だった。



「……何者?泥棒には見えないけど……」



「別に知る必要もないだろ。危害を加える気はない。……それはただの事故だ」



僕はぶつけた額をこすっていた。


無機質な口調に苦笑いを浮かべてみたが、「彼」の表情はやはり動かなかった。


「彼」は無表情のまま、片手を広げて見せた。



「五日だ」



「……は?」



「後、五日で君は死ぬ。良かったな、望みが叶って」



「……話が読めないんですけど」



「彼」はこっちの言葉には全く反応を示さなかった。



「……用は終わった。時間を無駄にするなよ?」



「おい!!……あれ?」



気付くと、目覚ましの音が鳴り響く中、部屋の天井に向かって手を伸ばしていた。



「武!?遅刻するわよ1?」



母がドアの向こうで怒鳴っている。



「……起きたよ」



僕はぼそりと呟いた。



本当は後30分位は寝ていても大丈夫なのだが、仕方なく着替え始めることにした。



(……妙な夢だったな……)



「夢じゃねぇ」



僕は後ろを振り返った。



当然のことながら、部屋には誰もいない。



しかし、確かに声がした。



「武!!」



空耳かもしれない。



これ以上母を怒らせないために部屋から出た。



「……何?」



「起きてんなら返事位してよ!」



母は足音も荒く、階下に降りていった。



また一日が始まった。







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