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会計を済まして外に出ると、草薙がガードレールに腰掛けてこっちを見ていた。
「……で、どうします?」
「私、なんでここにいるの?」
「へ?」
草薙は単語を区切って繰り返した。
「私、なんで、ここに、いるの?」
「……と、言われても……」
草薙はかなりきつい目でこっちを睨んでいた。
「……タケは何のつもりで私を誘ったの?」
「最期の思い出に」なんては言えない。
僕は言葉に詰まってしまった。
そんな僕を見て、草薙は視線を下に落とした。
「……私は……」
しかし、草薙は途中で言葉を止め、口を少し開けたまま停止した。
そして唇をきゅっと締めると、顔を上げた。
「やめた、こんな話」
その顔に笑顔が戻っていた。
彼女は立ち上がり、手で僕を促した。
「ちょっと歩こ」
僕が立ち止まっていると、彼女は二、三歩歩いてからこっちを振り向いた。
「置いてっちゃうよ!」
僕はしぶしぶ歩き始めた。
彼女に言いたいことがあるのは分かりきっていた。
多分、その内容も。
ただ僕が、どうしようもないほど臆病なだけだ。
どうしようもないほど。
僕はもう、痛い目を見たくなかったのだ。