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注文を終えてすぐ、草薙が戻ってきた。
どこか機嫌が悪いままだ。
「飲み物とってくるよ。何がいい?」
彼女は推し量るような目で僕を見た。
僕は目を丸くしながらそれを受け止めるしか出来ない。
何を意図しているのかさっぱり分からないのだ。
「……じゃあアイスティーで」
注文を受けた僕は、肩をすくめて飲み物を取りにいった。
考えたって仕方ない。
多分、さっきみたいに、戻ってくる頃にはいつもどおりの草薙であるはずだ。
しかし帰ってきた時も、草薙の機嫌は直ってなかった。
飲み物を渡すと、一応「ありがとう」と呟いたが、それ以降はむっつりと黙り込んでいる。
僕はさすがに困ってしまった。
「……どうしたの?」
草薙はちらっと目を上げた。
が、すぐにそっぽを向いた。
「……別に」
「……またかよ」
僕は苦笑いを浮かべたが、草薙は笑わない。
彼女は再び目を上げた。
「ねぇ、なんでそんなに遠慮してんの?」
僕は瞬きした。
「……遠慮?」
「私が「同情」とか、「ボランティア」でここにいると思ってるの?」
僕は彼女の顔をまじまじと見つめた。
そうじゃなかったらなんなのか。
「……やっぱりね」
彼女はアイスティーをクイッと飲んだ。
ちょうどその時、ウェイトレスが僕の注文したサンドイッチを持ってきて、僕は口を開くタイミングを見失ってしまう。
その上彼女が立ち去っても、草薙はそれ以上話そうとはしなかった。
僕は沈黙に耐え切れず、サンドイッチに手を伸ばした。