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店はガラガラで、すぐに席に案内された。
しばらくメニューを眺めていたのだが、どれもピンと来ない。
ファミレスのメニューというのは、どうしてこんなに「微妙」なラインをついてくるのだろう。
「……うーん」
草薙が首を傾げる。
「決まった?」
僕は思わず顔をしかめてしまった。
「今唸ってたの見てなかったの?」
草薙は素知らぬ顔で言った。
「私は決まった」
睨み付けると、草薙はクスクス笑ってメニューで顔を隠した。
僕は息を吐き出し、またメニューに目を落とした。
「あ、そういえば、映画おごってもらうの忘れてた」
視線を上げると、草薙が悪戯っぽいキラキラした目でこっちを見ていた。
「はい?」
「代わりにここでいいよ、タケ」
僕は文句を言おうとしたが、口を開きかけて止めた。
「……いいよ。あんまり高いもんだと払えないけど」
「ほぇ?」
草薙は目を丸くした。
その顔が面白く、僕は吹き出してしまった。
「ちょっと!何がおかしいの!?」
僕は空咳を一つして笑いを止め、顔を上げた。
「……顔」
途端に草薙は恐ろしい目つきになった。
「……タケ~……?」
「……スミマセンデシタ」
僕はテーブルに両手をついて謝る。
すかさず草薙がメニューを指差した。
「じゃ、このパフェ」
「へ?」(高っ!!)
一杯のパフェの値段じゃなかった。
普通だったら三倍分だ。でも……。
「……いいよ。今日付き合ってもらったし」
そのくらいは当然だな、と思った。
しかし、草薙は顔をしかめた。
「そういうつもりでおごるって言ったの?」
「? そうだけど?」
「タケ、何頼むの?」
心なしか、彼女の口調がきつくなったように感じた。
「……草薙は?」
「私ドリンクバー」
「……遠慮すんなよ。一応金持ってるしさ」
「自分で払うから。あ、頼んどいてね」
草薙は反論を許さず、パッと立ち上がる。
「え、あ、どこに……?」
「お・て・あ・ら・い!」
そしてぷいっと行ってしまう。
訳もわからず、僕は取り残された。