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いつものことだが、瞬きの間に朝になっていた。
僕は目をこすった。
「……なんでこう、瞬時に寝かせるんだ?」
(まぁ、いろいろとな)
ネモは誤魔化した。
電車の中、いつもどおり人ごみにもまれ、立ち位置が段々とずれていく。
電車が一際大きく揺れた時、僕は隣の人にぶつかってしまった。
「すみません!って、あ……」
草薙は腕をさすりながら僕を睨みつけた。
「肘入れた?わざと?」
「いや、その……」
僕の狼狽の原因は分かってもらえると思う。ネモの笑い声が聞こえてきた。
(うるさい!)
(あ、馬鹿、顔が赤くなってんぞ!)
(この野郎!!)
「……タケ?」
僕は頭の中でネモと会話している勢いのまま、草薙に噛み付いてしまった。
「は!?……あ……」
「はぁ?何、いきなり?」
草薙は不機嫌に言った。
「……いや、その……考え事を……」
「考え事?」
彼女に覗き込まれて一歩下がりかけたが、満員電車の中ではそうもいかなかった。
「うわっと!」
「?一体何なの?」
「……ゴメン」
とても気まずい沈黙があった。