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駅で草薙と別れたとき、走れば塾に間に合う時間だった。



「お!!」



しかし僕は、二、三歩走っただけで、急ブレーキをかけて止まった。




突然馬鹿馬鹿しくなってしまったのだ。



ポケットに手を突っ込み、ことさらゆっくり歩きながら、一人で呟いた。




「もうすぐ死ぬってのに、な~にが塾だ」



「そんなしかめっ面すんなよ」



限界まで細くした目でも、隣に並んで歩くネモは見えた。



「……なんかさ、俺、疲れたよ。まだ何にもやっちゃいないのにさ」



「何もやってないことないだろ」



僕が振り返ると、ネモは肩をすくめた。



「……校長に歯向かい、時田に喧嘩売り……十分「何か」してると思うんだが」



「……でもさ、何も「やり遂げてない」」



僕は暗い気持ちになった。



そう、僕は何一つ達成していない。




しかし、ネモが何気ない口調で言った。




「人間なんてそんなもんさ」



僕はその言葉に足を止められた。



ネモは少し微笑んでいた。




「何かをやり遂げて死ぬのはほんの一握り。未練なく逝った奴なんて、いやしないんだよ」




ネモは「行こうぜ」と促したが、僕は立ち止まったままだった。



「?……どうした?」



「……でも、そうなりたいじゃんか」



僕がそういうと、ネモは声を上げて笑った。



馬鹿にしているような笑い方ではなかった。




それが事実かどうかは別として、僕には彼が「分かっているよ」と言っているような気がした。






僕が歩き出した時、彼の姿がいつの間にか消えていた。






家に入るとすぐ、母が居間から出てきた。



「武?塾は?」



「今日は休む」



僕は二階に上がろうとした。



しかし、母はヒステリックにそれを止めた。



「武!?どういうこと!?そんな余裕があるような成績ではないはずでしょ!!」



「……体調」



「は!?」



僕はうんざりしながら繰り返した。



「体調が悪いから休む」



「体調?風邪?」



僕は肩をすくめた。



「学校で倒れちゃってさ。貧血っぽいけど」



「大丈夫なの!?」



「分かんないから休むんだよ」



そう言って僕は階段を上っていった。







「……ふう……」



部屋に入ると、ネモの姿がベッドの上にあった。



端に座り、こっちを見ている。



「……どうすんだよ?」



僕は肩をすくめて、ベッドに寝転がった。



「体調悪いから寝る!」



「はぁ!?」



僕は目を閉じた。








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