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終点に着いたのは、大体40分後だ。



ホームに降り、辺りをきょろきょろ見回してしまった。



いつも通っている駅と大差ないのに、なんだか落ち着かない。



そこに誰もいなかったからかもしれない。



ヴヴヴ……ヴヴヴ……。



携帯が鳴った。公衆電話からだった。




「もしもし?」



「タケ!?」



「……草薙……」



「何やってんの!?今どこ!?まさか死ぬ気じゃないよね!?」



草薙はすごい剣幕だった。



「……死ぬ気はないよ。只、学校に行く気もない」



すると、草薙は少し安心したようだった。



「……そう……良かった……」



「……と、言うわけだから。じゃあ……」



「待って」



切らせてくれなかった。



「……なんだよ?」



「……逃げ道はいつかなくなるよ?」



「……長いこと逃げるわけじゃ……」



「それに!」



草薙は僕の言葉を遮った。



「逃げたって何の解決にもならない……でしょ?」



「……じゃあ、どうしろって……?」



僕はベンチに座り込み、目を押さえた。



「戦って死ねってか……?」



「そんなこと言ってない!只、戦う前に逃げるのは……」



「誰が!?」



僕は吼えた。



「誰が戦う前に……!?」



僕にとっては、この毎日が戦いだった。



生きていくことが。



しかし、草薙もまた怒鳴り返してきた。



「決まってるでしょ!?」



彼女の声は、携帯を耳から離しても聞こえるほど大きかった。



「殴られても、蹴られても、黙ったままの誰かさんよ!!」



何も言えなくなってしまった。



差し込まれた感があった。



「……また黙る!戦いもしないで、何かが変わる訳ない!」



「……そう……だな……」



僕の口調が、草薙の声をも変えた。



「……ごめん」



「え?」



「……何もしてないし、何もされてない私が偉そうに……」



彼女の悲しそうな声に、僕はまた何も言えなくなってしまう。



草薙は繰り返した。



「……ごめん」




しばらくして、電話が切れる。



恐らく、コインを入れることを忘れていたのだろう。



いや、もしかしたら、彼女が切っただけかもしれない。





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