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クラスメイト

「あ、知ってたんですか……。ええと、僕が本気を出すと、最後の彼のようになってしまうので……」

「他の2人は気絶させてたじゃない」

「それは手加減がうまくいったからです。人を殺すわけにはいかないので……」


なんだか怖いことを言う。


「それに、僕が被害にあっていれば、他の人が被害にあうことはないでしょう?」

「え? じゃあ、他の奴がいじめられないように、あえていじめられてるわけ?」

「それもあります」

「もってなんだよ」

「いろいろですよ」


話す気はないらしい。

翔子の家が見えた。


「ここでいいよ」

「分かりました。お気をつけて」


上下威無人が背を向けて帰ろうとする。


「そのセーター!」

「はい?」

「色だっさ。お礼にもっといいやつプレゼントするから」

「え?」


上下威無人が着ているセーターを見下ろす。


「ださいですか?」

「モスグリーンとか。年寄りくっさ」

「年寄り……」


ちょっと傷ついたようだった。


「じゃ、またね」

「はい。また」


家に走り込んだ。




******




数日後、翔子はさんざん悩んで、鮮やかな黄色のセーターを買った。

そしてあの場所で待ち受け、上下威無人に礼だと言って押し付けた。


「ありがとうございます」

「だから、礼を言うのはこっちだってば」


上下威無人がそのセーターを着たのかは、翔子は知らない。

教室でも関わることもなく、学校の外などで会うこともない。

待ち伏せすれば話ができないわけでもなかっただろうが、気恥ずかしさが勝ってできなかった。

そしてある日、彼は学校に来なくなった。同時期に阿多地雄磨も来なくなった。

みんな阿多地雄磨のことは噂しあったが、上下威無人について語る人はいなかった。

そしてまたある日、先生が上下威無人は家の都合で転校したと告げた。その言葉をきちんと聞いていたのは翔子だけだったかもしれない。


「別れの言葉もなしかよ……」


窓から外を眺めながら、翔子が呟く。

この先、上下威無人という同級生がいたことを覚えているクラスメイトはどれくらいいるのだろう。

少なくとも、自分は忘れることはないだろう。

木枯らしが通り過ぎた。冷たい風に首筋を撫でられ、翔子は首をすくめた。

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