上下威無人
突き出された腕を取り、綺麗に背に負った。男が地面に叩きつけられる。
「下コンクリートですけど、加減したから死んでませんよね?」
また生存確認をしている。生きているらしく、またほっとした顔をする。
「の野郎……」
アキラが折り畳みナイフを出した。
そして上下威無人に襲いかかる。
「ナイフは危ないですよ。下手すると自分も傷つけちゃいます」
突き出されるナイフを避け、顔に向けて振り下ろされた腕を掴んだ。
「え~と、ナイフを落とさせるには手首を締め上げるのがいいんだっけ?」
ごぎ
鈍い音がした。
「ぎゃああああ!!」
アキラが悲鳴を上げる。
「あ、すみません。加減を間違えました」
上下威無人が手を離す。アキラが床で痛みに悶える。
「ああ~……。壊しちゃった……。でも、生きているから、セーフかな?」
アキラを見下ろしながらのんきに呟いている。
翔子はぽかんと見上げていた。
ひ弱にしか見えない上下威無人が、あっという間にアキラ達を行動不能にしてしまったのだ。
「山木さん、大丈夫ですか?」
上下威無人がこちらを振り向く。その顔はいつも教室で見るのと変わらない、飄々とした笑顔。
「え……。うん……」
慌ててはだけた服を整える。
「帰りましょう」
「う、うん……」
立ち上がる。
「ひ……」
扉の前にいたカナが、上下威無人を見て退いた。
カナには目もくれず、扉を開けて出て行く。翔子もその後に続いた。
夜の街を家に向かって歩く。隣にいるのが上下威無人だというのがなんともおかしな感じだ。
「ねえ。いつどうやって来たの?」
疑問に思っていたことを聞いた。
すると上下威無人が困ったような顔をする。
「ええと、それはマジックのようなもので、ネタをばらすわけにはいかない、ということでごまかされてはくれませんか?」
「なにそれ」
よく分からないが、話せないということは理解する。
「まあいいや。助けてもらったんだし。文句は言わない」
「ありがとうございます」
明らかにほっとした顔になる。
(表情あるじゃん)
よく見れば分かりにくいだけで表情がある。
「ねえ。あんだけ強いのに、なんで阿多地達にいいようにされてるのよ」




